277 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/04 01:41
夜の中隊本部編 田浦3曹は下宿として、使用するコーポアミバ(月四万円)205室でテレビをみながら一人、ビールを飲んでいた
(思えば、俺が訓練B、上番してから、大変な事が多いなぁ)などと考えながら
TVではエンターの殿様と言う若手芸人が腕を競う番組をやっている
278 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/04 01:47
最近、流行の元プロレスラー ダッチャ石末の伝説パァト21(歌はかま)のカスタネット漫談も終わりになった時、中隊の先任補給 通信の各陸曹より電話が来た
内容は 今から一緒に飲むぞと言う内容だった
279 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/04 13:16
田浦は飲む誘いを断った そして・・・ 夜が明けた
夜の中隊本部編 完 引き続き本編をお楽しみ下さい
280 名前:まいにちWACわく!その90 投稿日:04/05/05 12:32
そんなこんなで3月下旬、山崎士長と赤城1士の部隊通信は無事終了「特技認定通知、初級部隊通信553…」人事の倉田曹長が二人の人事記録簿に書き込む
「無事終わりましたね」と田浦3曹「これからが大変だろうなぁ…」と先任「ま、とりあえずは来月からだな」
3月下旬の定期異動。運幹の森永1尉ほか10名が転出、幹部1名を含む7名が転入してきた。任期満了退職は4名「−14の+7だから…トータルで−7だな、戦力減だな…」と頭を抱えるのは先任だ
「運幹は岬2尉が付くんですね、新しく来た石田2尉が2小隊長か…」と田浦3曹「何にせよ東野がいなくなったのはきついな」とぼやくのは訓練Aの中島1曹だ
補給の東野1曹は「楽隠居」の夢が叶い業務隊へ転属となった「でもあの人の事だから、楽隠居はできないでしょうね」と田浦3曹
そして3月末のある日の終礼…「4月1日昇任者の紹介を行います」先任が言い赤城1士を含む数名が前に出てきた。中隊長が一人一人に階級章を手渡す
「曹学や補士は一般隊員より早く昇任する、それだけに責任も重大だ。これからも精進するように!」と中隊長が締めくくる
そして終礼後…「よっ赤城士長!」田浦3曹が声をかける「明日付けですけどね〜」ちょっと嬉しそうに答える赤城1士。二人は自販機の前に移動してきた
「襟にマークがあるから曹学ってのはわかるけど、それでも士長になったんだから責任も増えてくるよ」「そうですね〜でも満期金は無いんですよね」そう言って苦笑いする
「その代わり昇任が約束されてるから…まぁ一般で入って陸曹になるのが一番おいしいかもしれないけどね。オレがそうだったのさ〜」「いいなぁ…」
「そういやお金は大丈夫?借金とかしてないよね」ちょっと心配になり尋ねる田浦3曹。最近は借金に関する話が厳しくなり、指導も厳重に…との指示も来ている
「大丈夫です、もう貯金も50万くらい貯まりました〜」「そっか、なら安心だな。また通帳とか見せて貰うね」そう言って田浦3曹は缶を捨てて立ち去っていった
281 名前:まいにちWACわく!その91 投稿日:04/05/05 12:36
そして4月1日、新しい年度が始まった。まずは連隊朝礼、そして中隊長の年計、期計の教育だ。連隊朝礼では連隊長が「今年も頑張ろう」と決まり文句を言って終わった
そして中隊の教場で、年計・期計教育が始まった
「まずは年度の大まかな計画を達する」そういってプロジェクターに計画表を映し出す
「今年は秋に他の連隊のCT、そして年明けに方面のYSがある。よって中隊検閲は7月に実施する。知っての通りCTは無い」誰かが小さい声で「やった」とつぶやく
「あとは…中隊検閲は『対遊撃』だ。山中に潜むゲリラの発見・殲滅が任務となる。各人しっかりと錬成するように!」そう言ってパソコンを操作する
「次は細部計画、運幹頼むよ」そう言って岬2尉にバトンタッチする
「この4月から運幹に上番しました岬2尉だ。何かと迷惑をかける事になるかと思うがよろしく」そういって軽く頭を下げる
そして指示棒を持ち説明を始めた
「まずは4月、桜祭りと#1野営だ。#1野営は射撃メインで、LAM・84RR・軽迫の射撃を実施する。それから5月、#2野営は同じく射撃メインだ。行軍から掃討に移る行動を錬成する。6月は連隊の持続走大会、そして演習場整備。合間を縫って中隊錬成野営も実施する」
そしてパソコンを操作する
「7月は中隊検閲の#3野営、8月上旬に軽迫・ATM射撃の#4野営。これは長いぞ、10日くらい富士にこもるからな。9月は他中隊の検閲の#5野営、そして連隊の銃剣道大会…」
そうして来年3月までの予定を説明していく「…以上で終わる、何か質問は?」無いようだ(何人かは寝ているようだ)「よし、ではこれからは各小隊の指導時間とする。15時から駆け足、わかれ!」
282 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 08:56
「ところで、毎朝駆け足する話やっぱり消えたな」こう話するのは新補給陸曹の林2曹である
林は3小隊の分隊長から補給についた。支援に来ていた三島は「助かりますよ!林2曹、あまりその話して、また再燃させないでくださいね」
283 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:03
「若い奴がそんなんでどうするんだ!」と後ろから激が飛ぶ。三島は恐る恐る後ろをみると人事の倉田曹長だった。「いゃ〜すみません」と三島は照れ笑いをしていると「三島、お前、そんなんで、2次は通らないぞ!」
284 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:12
へっ?とした顔で「2次?候補生のですか?」と三島が聞く。「そうだ、噂だがな、お前今回、凄く点数よかったようだぞ、詳しくは11時に中隊長から話あるから」林が「やったな!」と三島を軽くこつく
三島は呆然としている
285 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:22
「なんか不満そうな顔してるな?」と林が三島に問うと「いえ、あの、自分、今年度限りの自衛隊生活って思ってたんで、教範一度も開いてなかったんで、驚きすぎました、確かに今回、覚えてた所多くて楽なテストと思ってたんですが。」
287 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:30
時間になったので中隊長室に行き話を聞いた
そこで連隊での順番の発表があったが。三島は二番目だった。周りは驚いているが「俺は一番信じられない」などと、言動が定まらないほど驚いている
288 名前専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:36
「教練や体力検定錬成は各営内班長にさせて、面接は俺や先任、倉田曹長が面倒見るからな、2次までの2週間全員合格させるつもりでがんがんいくぞ」と気合いの中隊長で早速午後からとりあえずで面接を錬成した
289 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:46
その日課業終わって 中隊長と先任と倉田と事務所で話をしていた
「今日の面接はどんな感じだった?」と中隊長が聞くと先任と倉田は顔を向き合わせ「三島を鍛え直さなきゃならんすよ・・・」とため息をつく
中隊長が詳しく聞くと内容はこうだった
290 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 09:56
「三島以外は、特に問題ないでしょう、なぜ三島が問題。今日した質問に今まで一番記憶にある仕事は?としたんです。そしたらあいつ各支援で過去なら音楽祭り、最近は師団記念日と。また、」今回受かったのは本当に運だけのようで、教範関係の奴は全滅で
291 名前:専守防衛さん 投稿日:04/05/09 10:10
中隊長は納得する。しかし「面接が多少駄目でも体力検・」と口を濁す「他は文句ない体力自慢が受かってますが、三島だけが見劣りします」と先任
「ひっくり返させない為には?」と聞かれ「外禁、錬成でどこまで・・」と、先任は答える
次の日三島は外禁を告げられた
292 名前:まいにちWACわく!その92 投稿日:04/05/09 12:42
「…?」3科から帰ってきた田浦3曹が事務所に入ろうとしたとき、すれ違いざまに三島士長が出てきた。何か顔にすだれがかかっているような感じで、声を掛け損なった
「どうしたんですか三島は?」事務所に入り中島1曹に聞く「2次が終わるまで外禁だってさ、体力練成だと」
「それは…2週間でどこまで伸びますかね?」「それは…ま、大変だな」先任に目をやり中島1曹は答える。視線の先には文字通り頭を抱えた先任と倉田曹長がいた
「それはともかくウチの仕事だ、まず何があるかな?」そう中島1曹が尋ねる「そうですね、まずは…」そう言って書類の山を引っかき回す
「今週金曜に新隊員の入隊式、同じ日に連隊本部山中准尉の定年退官行事、土曜の晩から駐屯地の一般開放、日曜には桜祭りです」「桜祭りの勤務は?」
書類を読み上げる田浦3曹「増加警衛に…」人数を数える「さすがに接遇はありませんね」赤城士長はもう接遇には使わない方針のようだ
「2次受験要員とかも外さないとな」頭をかく中島1曹「三島は使えませんね」
「あとは中隊の焼鳥屋か…調理要員は?」「オレだよ!」そう言ったのは高木2曹「もう菌検索は終わってるよ、インフルエンザは出なかったよ〜」「縁起でもない…」と呆れたのは田浦3曹だ
「おいおい…中隊予算がかかってるんだ、コピー代も欲しいからしっかり売ってくれよ?」とは中島1曹だ
書類が多いためコピー機を支給される海空に比べ、陸上自衛隊の大部分の部隊はコピー代を中隊隊員から集めている。「私物パソコンの管理」と並ぶ悪習の一つだが、改善される予兆すらない
そして15時になった。体力の衰えが気になる田浦3曹は(今年度はできるだけ走るようにしよう)とジャージに着替えて隊舎前に出てきた。すると… 「おや、田浦3曹も走るの?」佐々木3尉と3小隊の面々が輪になって準備体操していた「一緒に走ろうや〜」と声をかけてきたのは井上3曹だ。赤城士長も一緒に体操している (断る理由は無いな)そう思い田浦3曹は体操の輪に入った
293 名前:まいにちWACわく!その93 投稿日:04/05/09 12:43
駐屯地の周り、駆け足コースをゆっくり走る。持続走要員の若い連中が何人かピッチを上げて走り去るのを横目に、佐々木3尉たち主要メンバーはペースを崩さずに走る
「あ〜しんどい、訓練に上番以来サボってたからなぁ…」少し息を荒げ田浦3曹がつぶやく「言い訳やな〜」と横を走る井上3曹が言う
「ハァ…赤城、どうだい3小隊は?…ハァ、ハァ…大丈夫か?」「今の田浦3曹よりは大丈夫かと…」苦笑いして赤城士長が答える。少し汗をかいているが、まだまだ余裕のようだ
「次の野営でLAMの射手になったんだよな?」横から片桐2曹が声をかける「3小隊割り当ての…ハァ…演習弾ですか?」そう答える田浦3曹「まだ実弾には早いだろう」とは佐々木3尉だ
「縮射弾はありますけど、実弾は初めてです!」嬉しそうに言う赤城士長「一回撃てば充分、2度撃ちたい代物じゃないな」と小野3曹、毎回84RRを撃っている小野3曹はもう飽きているようだ
「ハァ…的に当てたら何か…ハァ…おごるよ」「ホンマか?オレも撃つんや〜しかも対戦車りゅう弾」とは井上3曹だ「陸曹は…ハァ…除外!」呼吸を乱しつつ力強く答える
「よし、ペース落として〜」神野1曹が声をかけ、全員ペースを落としてサーキット場に入る。整理体操を具志堅士長の統制で終わらせて、各人の筋トレとなった
鉄棒にぶら下がり懸垂をする田浦3曹、みんな思い思いの場所で体を動かしている。腹筋をしている赤城士長に、体の大きい若い隊員が声をかけている「よう、赤城!」「おや、喜一ちゃん元気?」
曹学同期の情報小隊・後藤士長のようだ「なんやデカいヤツやな〜」「彼が後藤士長か…噂通りデカいな」と井上3曹と田浦3曹がひそひそと会話する
294 名前:まいにちWACわく!その94 投稿日:04/05/09 13:10
やはり同期には普段見せない顔をする、なにやら楽しそうに話す赤城士長と後藤士長「…中隊はどう…」「次の演習に…」
それを見ている田浦3曹に井上3曹「やっぱり同期の絆だな」「俺たちみたいやなぁ」「…それはどうだろう?」
サーキット場ではどこから持ってきたのか、神野1曹がパンチンググローブを持って具志堅士長のパンチを受けている
さすがに元インハイ出場は伊達ではなく、鋭いパンチを何発も繰り出している
「やるかい、赤城?」神野1曹が見ていた赤城士長に声をかける「じゃ、少しだけ…」そういって神野1曹の前に立つ「お手並み拝見だな」
パン!といい音が鳴り響く、空手らしく直線の突きが多い。軽やかに左右に動き、何発もの突きをグローブに叩き込んでいる
「…ほ〜」「意外といい動きだな」「なかなか…」傍から見ている3小隊や他の中隊の面々が感心している
「すごいね、うかつに手を出すなよ?」田浦3曹が隣に立つ井上3曹に言う「俺はああいう野蛮なことはせんからなぁ」そう答える井上3曹
「なかなかやるじゃないか」感心したように言う神野1曹「喜一ちゃんもすごいんですよ」そう言って近くで見てた後藤士長を呼ぶ
「おぅ、でかいな…君が後藤士長か、やってくかい?」「どうも、よろしくです」そう言って後藤士長もパンチを繰り出す。体格が大きいため、一発一発が重たそうだ
「よし、もういいだろう?手が痛いよ」苦笑いして神野1曹が言う「やるね〜君もボクシングを?」そう言ってきたのは具志堅士長だ
「いえ、総合格闘技の方で…」「じゃあレスリングとかもするのか?」そう聞いてきたのは小野3曹だ
「いやいや、やっぱり拳法だろう…」と横から口を挟むのは佐々木3尉だ。そうして格闘技経験者たちの格闘談義が始まった
「つきあってられへんな、先上がるわ」そう言って立ち去る井上3曹「俺も上がるよ」と田浦3曹も後から付いていく
「井上は格闘技経験は?」田浦3曹が聞く「あらへん、スポーツもろくにしてへんからな」
「普通科には珍しいな」「ええねん、俺にはこれがあるから」そう言って右手人差し指を曲げる「射撃だけが俺の技や、これだけは負けるわけにはいかへんからな」
「そうか、技が無い俺よりはましだよ…じゃあな」そう言って部屋に帰る田浦3曹と井上3曹であった
295 名前:まいにちWACわく!その94 投稿日:04/05/09 13:41
「宣誓!われわれは…」体育館で新隊員たちが宣誓を読み上げていく。今日は4月隊員の入隊式だ
桜も咲き晴天に恵まれたこの日から、彼らの地獄の日々(大げさ)が始まるのだ
「でももう2名辞めたらしいですよ」入隊式が終わって事務所に帰ってきた田浦3曹が言った「最近はすぐに辞めさせるからな、いいことなんだか…」と先任
「今日は13時から山中准尉の定年退官行事、集合は1250です」田浦3曹が先任に伝える「そうか…山中さんもついに退官か…」
駐屯地メインストリートの桜並木は、ほぼ9分咲きの桜で鮮やかに染まっていた。道路の両端に各中隊が一列に並んでいる
「これは…何するんですか?」赤城士長が隣の田浦3曹に聞く「定年退官者の見送りだよ、いい日に定年になったな〜」桜を見上げながら田浦3曹が答える
駐屯地のスピーカーから「蛍の光」が流れ始め、定年を迎えた山中准尉が連隊長のエスコートで歩いてきた、みんなが拍手で迎える
「お〜佐藤、先に隠居させてもらうわ!」列に並んでいた先任に向かい握手をする「お疲れさまでした!」先任もがっちりと握手を返す
正門前で万歳三唱を唱え、警衛の捧げ銃を受けて山中准尉は去っていった…
「…」「どうした赤城?」なにやら考えた顔の赤城士長に田浦3曹が声をかける
「いえ…あの人は30年以上自衛隊にいたんですよね?満足だったのかなぁ…」「さぁ?それは人それぞれだからね。でもよかったんじゃないかな?結局戦争も起こらなかったしね」
「それは…」「いい事だよ、俺たちが何か仕事する時は誰かが不幸になってるんだから。俺たちは給料泥棒と呼ばれるのが一番幸せなんだよ」
「…へ〜」「…なんてね、新隊員の時の区隊長の受け売りだけどね」そう言って頭をかく田浦3曹であった