まいにちWACわく!その8(部隊通信修了)

261 名前:まいにちWACわく!その78 投稿日:04/04/29 20:07

「よ、おかえり」師団司令部から帰ってきた井上3曹に声をかけたのは田浦3曹だった「どうだった?売られた先は」
「ん〜まぁいつも通りやな。それより話を…」いつになく真剣な顔をする「赤城がウチに来るんやって?マジな話なんか?」
「あぁ、こないだ…」事務所であった近藤曹長と神野1曹のするは「…というわけでな、営内班長も神野1曹に変わったぞ。オレが補助に付くのは変わらないんだけどな」
「そんな事があったんや…」井上3曹そうつぶやきち頭を掻く「あれ?反応薄いな〜てっきり『オレが班長になって、夜の個別指導をやったるわ〜!』とか言うと思ったのに」
「あのなぁ…」ょっとあきれ顔だ「オレがそんな風に見えるかぁ?」「見えるけどな」きっぱり断言する田浦3曹

場所を自販機前のベンチに移す
「そりゃWACが来るってなったら冗談でも『ウチに来んかな〜?』とか思うわなぁ。でもマジで来るってなるやろ?こっちの訓練や仕事に絡んでくるんやから真剣になるわな」
「真剣に考えてるのか?」「そりゃあなぁ…」コーヒーを一口飲む
「例えばトイレは?寝るとこは?どこまでの事ができるんや?生理とかもあるやろ?問題点は山積みやぞ。そこまで考えとるんかいなぁ、ウチのボンボン小隊長は…」
「悲観視しすぎじゃないか?あの子の能力は高いぞ」「能力だけの問題や無いと思うが…ま、命令なら従うんやけどな」空になった缶を投げ捨てる

「とにかくあの子の部隊通信が終わってからやろ。いつもの事やけど様子見するわ」「そうしてくれ、考えすぎは健康によくないぞ」


262 名前:まいにちWACわく!その79 投稿日:04/04/29 20:08

クラブ「一番星」では3小隊のメンバーが6人ほど集まって飲み会を開いている
「いやいや、予備自が終わってホッとするよ。あいつらの射撃訓練に付き合うのは命がけだからな〜」そうぼやくのは3小隊のbRである片桐2曹だ
片桐2曹は39才、3小隊の中で最年長である
「そんなに危険なの?」そう聞くのは佐々木3尉だ「危ないですよ〜弾を装填した銃を右に左に振り回すわ、安全装置をかけずに銃を肩から外すわで…」
「ま、お疲れ様だね」そう言ってビールを注ぐのは神野1曹だ
「ホントに元自ですかね?危ないなぁ」と呆れるのは鈴木士長だ。レンジャー鈴木士長は現在陸曹候補生を目指して猛勉強中である
「ま、頭数合わせだからな」たこ焼きを突くのは小野3曹、体育学校でレスリングをしてた経験があり、そのせいか丸太のような腕をしている。そのパワーを生かして小隊では「不朽の無反動砲手」で通っている
「は〜危ないさぁ、そんな人らに援護射撃とか頼みたくないなぁ」そうつぶやくのは具志堅士長だ
沖縄出身の具志堅士長は母親が米軍の黒人とのハーフだったらしく、少し浅黒い肌をしている。名前通り(?)ボクシングでインターハイ出場の経験がある

「ところでだ、例の件はもう聞いたかな?」佐々木3尉が口を開く。「例の件」とはもちろん赤城1士の事だ
「何させるんですか?」と聞くのは片桐2曹「無反動の副砲手?使えるかなぁ…」とは小野3曹だ「いや、通信手じゃないかなぁ〜」とは具志堅士長だ
「具志堅、当たりだ。当初は小隊長通信手で使う予定だ」と神野1曹が言った「具志堅もついに班復帰だな〜」鈴木士長が嬉しそうに言う
「しかし使えるのかね?俺達全員WACと一緒に演習なんて経験無いぞ」そう心配するのは片桐2曹だ。陸士時代が長かったために年の割には階級が低いが、よく上の二人を立ててサポート役に徹している
みんな同様に考え込んだ顔をしている、普段は馬鹿話をしていてもやはり現実問題となると扱いが変わるようだ
「まぁ、まずは彼女の部隊通信教育が終わってからだな。それにクーリングオフも効くから心配すんなや!」少々たとえは悪いが神野1曹がこう言ってまとめる
しかし顔には出さないが、一番不安なのはその神野1曹であった(ホントにうまくいくんだろうか…)


263 名前:まいにちWACわく!その80 投稿日:04/04/29 20:08

中隊でのそんなこんなの心配をよそに、赤城1士の部隊通信教育は順調にそのカリキュラムをこなしていく
そして3月頭、教育の最後を飾る「総合野営」が始まった

「…と言っても1夜2日なんだがな。最初の日の午前中に移動、午前〜午後にかけて無線傍受、午後から有線構成、晩に断線状況、翌朝に小銃中隊の突撃に合わせた追随構成、そして状況終わりだな」
そう説明するのは通信小隊の金田3曹、聞いてるのは田浦3曹だ「結構本格的じゃないか?」「だから各中隊から支援を貰うんだよ」
最後の追随構成のために2コ小銃班、そして食事等の管理要員で各中隊から支援人員が出ているのだ
「ウチからは小銃班に5名、管理にオレを含めて2名来てるよ。そうそう、井上もいるぞ」「アイツが?うるさいんだよなぁ…」
田浦3曹と金田3曹、そして井上3曹は陸曹候補生同期である「まぁまぁどうせ明日までなんだからさ」

車で2時間ほどかかって近くの演習場に到着した。管理要員は廠舎に泊まれるようになっているので、田浦3曹たちはさっそく荷物の卸下を始める
「じゃ、オレは学生どもを見てくるわ」そう言って金田3曹は学生たちの所に向かった


264 名前:まいにちWACわく!その81 投稿日:04/04/29 20:10

『…こちら00、電あり筆記用意、送れ』無線機から流れる電報に学生たちは耳をそばだてている。12名の学生はそれぞれ4人ずつ3コ班に分かれて、各組ごと行動している
「こちら02、001の電了解終わり」電報を取り終わり各班に付いている助教に電報用紙を渡す「できました、金田助教」そう言ったのは赤城1士だった
「ん、貰おうか」そういって用紙を受け取る。武闘派でもやはり女の子、丸っこい字が少しかわいい感じがした「よし、次は1430から有線構成!159とリールの27を用意しておくように」
「はい!」学生たちが返事する「それまで食事。レーションはおいしくないがちゃんと食べておけよ」

「…けっこう早口だったよな?」「いや、あれくらいなら…」「雑音が多くて…」食事をしながらさっきの電報の件を話している
赤城1士を含む「第2班」は、本管の情報小隊の若手3曹である冬木3曹、通信小隊の新兵である森1士、そして山崎士長と赤城1士である
「まずは159の徒歩構成か、最初が一番キツいのって運がいいな」そうニヤッと笑うのは冬木3曹だ「あとがキツい方がいやだからな」
レンジャー助教でもある冬木3曹には1夜2日の状況など屁でもないようだ
「次は車両構成かJDR−8(小型のドラム)の徒歩構成ですね」そうつぶやくのは森1士、大卒で補士として入隊した彼はちょっと線が細く頼りなく見える
「…あんまりおいしくないなぁ」そうぼやきつつレーションを平らげたのは山崎士長だ

「…どうした赤城?元気ないな」普段は明るく元気な赤城1士だが、今日に限ってはなぜか普段より無口だ。それを心配してか冬木3曹が尋ねる
「いえ、大丈夫です」そういう口調にも元気があまり感じられない「ホントか?無理はするなよ」釈然としない顔をしながらもねぎらいの言葉をかける
その様子を見ていた森1士は、小便と称して金田3曹と冬木3曹を人気のないところに誘い出した

265 名前:まいにちWACわく!その82 投稿日:04/04/29 20:12

「彼女、生理じゃないですか?」森1士は開口一番ズバリと言い放った「…そうなのか?」「そうかもしれんな、でもどうしてそう思う?」金田3曹と冬木3曹が尋ねる
「全くのカンですが…僕の彼女も生理の時はあんな感じなんです」
「だが今まであの子がそんな風になったのは見た事無いぞ?」
「山ですし、今日は特に冷えますから」「う〜ん…」そう言って二人の陸曹は押し黙る
「確か衛生のWACが救護員で来てたよな?中森だったかな?」と金田3曹が思いついたように言う「そうですね、一応言っておいたほうが…」と冬木3曹も同意する
「冬木、言ってきてくれ」「え〜オレですか?やっぱり助教の口から言った方が…」「そんな女の子の前で『生理』だなんて…」意外とシャイな金田3曹
「あの子なら経験豊富そうだから大丈夫でしょ」とは森1士の弁だ「じゃあ森、言ってきてくれ。彼女とは同期だろ?」「…まぁいいっすよ、じゃあ言ってきます」

廠舎の救護所には衛生小隊の陸曹と中森1士がいた「姐さん、ちょっと…」同期の間から「姐さん」のあだ名で呼ばれている中森1士であった
「どしたの?」「いや、ウチの班の赤城が…どうも生理みたいでしんどそうなんだよ。でさ、様子を見ておいてもらえないかな〜と金田3曹が言ってたんだよ」
「そうなの?わかったわよ、まぁでもあの子は生理軽いからそんなに心配しなくてもいいわよ」あっさりと答える中森1士「そう?こればっかりは男にはわからないからね」照れたように頭を掻く森1士
「辛いわよ〜味わわせてやりたいわ」そう言ってニヤッと笑う中森1士であった


268 名前:まいにちWACわく!その83 投稿日:04/05/02 02:09

2班の有線構成が始まった。冬木3曹と森1士で159ドラムを持って森の中を歩いていく。その後から付いてくるのは山崎士長と赤城1士だ
(あいたた…お腹痛いなぁ)そう思いつつ有線を縛着していく赤城1士、やはり森1士の予測通り生理中のようだ。傍目から見ても動きがよくないのがわかるらしい
「よし、半分来たな。じゃあ交代だ」金田3曹が指示を出す「山崎と赤城、ドラムを持って前進だ。…赤城?いけるか?」心配そうに聞く金田3曹
「ハイ、いけます!」キッパリと言う赤城1士だが、やはり金田3曹には不安のようだ「無理はするなよ」と声をかける
(意地になってるのかな?危ない兆候だな…)

カラカラカラ…冬の静かな森の中をドラムが回転する音がこだまする、雪こそ無いがやはりかなりの冷え込みだ。みんな着込んでいるので動きにくそうだ
山崎士長と赤城1士は身長差もあまり無く、二人でうまい具合にドラムを保持している。だが…「…わぁ!」赤城1士が足を滑らせた拍子に山崎士長がドラムを落としてしまった
「あぁ、ゴメン!」「…いえ…」やはりちょっと不機嫌なようだ

そんなこんなで徒歩構成が終了、電話機を使い交換に連絡する「…次はJDR−8だ、いったん戻るぞ」連絡を終えた冬木3曹が班員を引き連れていく

一人で持てるドラムJDR−8はその構成距離も短く、その分構成時間もあっという間に終わる。そして最後の「車両構成」までの間に休憩する事となった


269 名前:まいにちWACわく!その84 投稿日:04/05/02 02:10

「ふぅ…」廠舎近くに設置された交換所に帰ってきて、さっそく一服つける森1士「あと一本か〜楽勝だね!」と明るく言う「そうだね…」やはり元気のない赤城1士
そんな時、左手に赤十字腕章を巻いた中森1士が通りかかった「やってますね!差し入れですよ」そう言って冬木3曹に乾燥梅肉を手渡す
そして道ばたの石に座っている赤城1士の隣にやってきた。そして顔を一目見るなり「何日目?」と小声で尋ねた

「3日目…だからあと少しだよ」そう答える赤城1士「無理しちゃダメよ、あとあと班のみんなに苦労をかける結果になるんだから」そう諭す中森1士。確かに症状が悪化して後送することになれば、同じ班員が迷惑するだろう
「引くのも任務のウチよ」「うん、でも大丈夫!ホントにダメになったらちゃんと言うから…」

通信小隊の1t半が帰ってきて、いよいよ車両構成の時間だ。荷台に固定してあるリールに159ドラムを乗せて、いよいよ構成が始まった
「今回も役割分担は交代する。車に乗ってドラムの速さの調整をするブレーキ手と、車の後を走り有線を縛着する縛着手だ」そう金田3曹がいい、まずは山崎士長がブレーキ手をする事となった

車は小走り程度のスピードで進んでいく。ドライバーは通信小隊のベテラン陸士だ
3人は道ばたの木や電柱、草などに次々と縛着していく。慣れてないとすぐに車に置いて行かれるため、かなり素早い動作が要求される
「ん?」車のすぐ後を走る冬木3曹が後方を振り返る、すぐ近くに森1士が有線を縛着している「赤城は…?」少し離されているようだ
「ドライバー、スピード落とせ」車に同乗していた金田3曹が声をかけると、1t半は歩くスピードくらいまで速度を落とした
そうして赤城1士が追いついてきた「やっぱりしんどいのか?いつもならこれくらいは楽勝だろ?」「すみません、ちょっと遅れて…」少し息が荒い
「着込みすぎじゃないか?そんなに寒いか?」外被の上からでもわかる着込みようだ「あんまり着込むと動きが鈍くなるぞ。そろそろ交代だしブレーキ手に付きな」金田3曹が声をかける
「まだ大丈夫…」「いや、完全にバテる前に休んだ方がいい。回復が遅れるからな」そう冬木3曹が言い山崎士長を引きずりおろす
「…」確かに冬木3曹の言うとおりだ、内心悔しいが仕方なく車に乗る赤城1士だった…


270 名前:まいにちWACわく!その85 投稿日:04/05/02 02:12

学生たちが廠舎近くに業務用天幕1号を建てる、通称インディアンテントとも言われかなりの人数が宿泊可能だ
当初は「赤城は別に…」という案だったが、本人の希望により同じ天幕に泊まる事となった
「ま、どっちにしろ服も脱がないし、オレも泊まるしな」廠舎で食事を取るのは金田3曹、田浦3曹、そして井上3曹だ
「夜中に状況作るんやって?」そう聞くのは井上3曹だ「この寒いのに…」
「そうでないと訓練にならないだろ?でも赤城は体調悪そうだったなぁ…さっきもメシをあんまり食べなかったみたいだしな」と田浦3曹「せっかく腕によりをかけて作ったのに…」
「生理らしいんだ、女にしかわからん辛さだからどうしようもないんでな」と金田3曹「そうなのか?」「それはしんどそうやなぁ」
「あまり無理はさせたくないんだが、本人にも意地があるからな」「そりゃあこの状況で泣きは入れれんわなぁ」井上3曹が同意する
「まぁ何とか明日の朝までもってくれればいいんだがな、じゃあオレは行くよ」そう言って席を立つ金田3曹

「心配通りやったなぁ。ホントにウチに入れて大丈夫なんやろか?」「珍しく心配性だな、まずは挑戦あるのみだろ?『誠実・真剣・挑戦』さ!」新しく作られた「誇り高き陸上自衛官の心得」を引用する田浦3曹
「『真剣』やない『献身』やろ?大丈夫か訓練陸曹…」突っ込む井上3曹だった

天幕内はストーブの熱気で少し暑いくらいだった。日没まで構成しててクタクタの学生は、もう全員が熟睡している。明日は5時に起きて追随構成の準備に入る予定だ
12時を少しすぎた頃、「ピーッ」と天幕に笛の音が響いた


271 名前:まいにちWACわく!その86 投稿日:04/05/02 02:13

「起床!」そう言って金田3曹はみんなを起こす
「たった今、有線が切断された。これから各班で断線箇所を発見、修復をせよ。早くしないと寝る時間が削られるからな!」

2班は最初に森の中を張った線が切られたようだ。冬木3曹と森1士が構成先から、山崎士長と赤城1士が交換所から断線箇所を手探りで探していく
「線を引っ張って手応えがなかったら断線を疑うんだぞ、明かりはあまり使うなよ」と金田3曹。ただ今日は月が満月に近く、葉っぱの少ない森の中は想像以上に明るかった
二人は無言で有線を手でもって探っていく、赤城1士が先行し山崎士長は後からついて行っている。そして…「あれ?」赤城1士は小さく声を上げた
目の前には冬木3曹がいた「無かったですか?」そう尋ねる「あぁ、そっちも?」どっちも断線箇所がないまま合流してしまった。とその時「あったよ〜」と言う声が赤城1士の後から聞こえた

「ほら、ここだよここ」そう言う山崎士長の持つ手には、確かに切れた有線があった「…見逃してました」顔を赤く染めて赤城1士が言う
「まぁまぁ、そのためのバディーだから。さてチェックするか…」そう言って冬木3曹は電話機を繋ぎ交換所へチェックの電話を入れた。断線が1カ所なのを確認後に接続、これが手順だからだ
青のフィルターで弱められた懐中電灯の明かりを頼りに接続を終わらせて2班は天幕に帰ってきた。どうやら一番乗りのようだ
「一番に見つけたんだから上出来だよ、さぁ明日も早いから寝ようか」そう言って冬木3曹は横になり、5秒後にいびきをかき始めた

そんな中赤城1士だけが、少し悔しそうな顔をして毛布をかぶっていた…


272 名前:まいにちWACわく!その87 投稿日:04/05/02 02:14

翌朝5時…追随構成の準備のため、学生たちは全員起床した。3班を2つに分けて他の班に合流させ、1コ班6名編成となった
攻撃発揮位置には支援要員が準備を完了していた「0630攻撃開始、各班は中隊長から離れないように!」中隊長役の陸曹は鉄帽にしろテープを巻いている
「おはよう赤城、よう寝たか?」声をかけてきたのは井上3曹だ「少し…」小さな声で答える
「そっか、置いてかれんように着いてくるんやで?」そう言って井上3曹は前に走っていった

0630…日が上がり始め、やっと人の顔が判別できる明るさになってきた「攻撃開始!」中隊長役の陸曹が指示を出し、各隊員は道路沿いの林に沿って進んでいく
攻撃目標は小高い丘の上にあるトーチカで、2コ班が西と北から攻撃をかけるシナリオである。仮設敵も数名準備されており、陣地を構えて待機している

「前方に機関銃陣地!これ以上前には進めません!」前方に出ていた班員が中隊長の所まで報告にくる「よし、射撃支援を依頼しよう」そう言って電話機を取る。傍らには肩で息をする冬木3曹と森1士の姿があった
赤城1士はどうやら遅れているようだ、支援射撃中に追いついてきた
「大丈夫か?」冬木3曹が聞く「はい、行けます!」そうは言うが息が激しくなっている「まぁとにかく少し休みな」班員たちはそれぞれ警戒に付き息を整える

「突撃支援射撃終了5秒前…3,2,1,今!」そう中隊長が叫び、各隊員がトーチカに向かって突入していく
「よし、行くぞ!」冬木3曹が言いドラムを持つ、班員たちも立ち上がり走り始める
トーチカまでは少し急な原っぱで、もう有線を縛着していく必要はない。冬木3曹たちを援護する形で班員は坂道を駆け上がる…二人遅れが出ている、山崎士長と赤城1士だ
「ほら、行け行け!」後から追い立てるのは金田3曹だ、攻撃開始以来妙にハイテンションである

有線が追いついた時には、各隊員がトーチカを占拠し全周警戒の配置に付いていた。さっそく電話機をつなげ中隊長に差し出す
「こちら中隊長、トーチカ占拠しました!」と報告、なにやら指示を受けている。そして電話機を置いた中隊長は「状況終わり!」と嬉しそうに叫んだ


273 名前:まいにちWACわく!その88 投稿日:04/05/02 02:15

「よ〜し状況終わり、各人武器装具の点検!」金田3曹が2班の班員を集め指示を出す
特に以上もなく電話機を使い金田3曹が報告する、そして「30分休憩したのち有線の撤収にかかる、それまで休んでおくように」と班員たちに指示を出す

「ふ〜終わった終わった…」冬木3曹が腰を下ろす「いやいや、状況開始はこれからですよ。撤収のね」とは森1士の弁だ
赤城1士は木にもたれかかりため息をつく「どうしたんや?」そこに声をかけてきたのは井上3曹だ
「いえ、ちょっと疲れました…」珍しく弱音を吐く赤城1士「相当堪えたみたいやな、これからもきついぞ〜ついてこれるか?」「…やるしかないです!」少し意地になったように答える
「ま、ボチボチ頑張り〜な」そう言って井上3曹は立ち去っていった…

有線の撤収が終わり、演習場を出発したのは14時を少し回った頃だった。中隊の高機動車を運転するのは田浦3曹、横には井上3曹だ
「やっと帰れる…でも帰ったらまた書類が山積みなんだよなぁ」そうぼやく田浦3曹であった
「…」井上3曹が珍しく押し黙っている「どうした?」田浦3曹が尋ねる
「不安材料が残ってもうたな」「ん?彼女の事か?もっと前向きに考えたらどうだ?初の状況で緊張してたからとかさ」
「でもなぁ…こればっかりはどうしようもないやろ?体力云々の話やないからなぁ…」そう言って前を走る1t半を見る。そこには荷台で熟睡している赤城1士の姿があった…


274 名前:まいにちWACわく!その89 投稿日:04/05/02 02:36

「疲れた…」駐屯地に帰ってきて終礼が終わり、営内班のベッドに倒れこんだ赤城1士はそう一言つぶやいた
「あら、お疲れね?」そう言うのは中村3曹だ「そんなにハードだった?」
「いえ、彼女『あの日』だったので…」そう言うのは中森1士だ。心配で部屋まで見に来たようだ
「そうだったの?」尋ねる中村3曹「…弱いところを見せちゃいました〜」泣き言を言う赤城1士「情けないとこ見せちゃったなぁ…」
中村3曹が頭をひねる「そう?気にすることないわよ」顔を起こし赤城1士がきょとんとした顔をする「そうですか?」
「そうよ、体に何かハンデのある人なんか自衛隊にはたくさんいるんだから」「?」「例えば…中隊に腰を痛めてる人っていない?」
身を起こし考える赤城1士「そういえばいますね。よく訓練なんかも免除されてる人も…」「でしょ?あとは膝とか首とかね。そういう人たちと私たちが生理になるのってどこが違うのかな?」
考えた顔をする赤城1士、さらに続ける中村3曹「赤城はちゃんと最後まで訓練をやり遂げたんだから、最初から何もしない人たちに比べたらはるかにマシよ。自信持ちなさい!」そういって肩をたたく
「…ハイ!」少し元気が戻った赤城1士であった



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