90 名前:まいにちWACわく!その10 投稿日:04/02/07 18:47
曹学は後期教育を陸曹教育隊で行う、それから各部隊に配属されるのである。今回は本管および各ナンバー中隊に一人ずつ配属されることとなり、本管から1t半トラックで迎えに行くこととなった。
到着予定は1130。10分前から舎後に各中隊の先任、営内班長等が集まっていた。
「時間通りに到着するかな?」先任が本管の先任・泉曹長に聞いている。「今のところ予定通りですね」まだ40代前半の泉曹長が答える。
一方、田浦3曹は中村3曹と何やら話している「よろしくね〜何せWACの班長て初めてだから…」「わかりました。ウチの若い子たちもいるから大丈夫ですよ!」少しふっくらした中村3曹が笑う。
「本管のWACは何人いるの?」「通信に陸士が2、陸曹が私だけ、衛生に今年入った子が2人、計5名ですね。全員私の班員です」「5人になるのか…大丈夫?」「大丈夫ですよ、経歴を見る限りしっかりした子ですし、真面目な子と聞いてますからね」
聞いてる?「聞いてるって?何か知ってるの?」「朝霞(女性自衛官教育隊)の助教から聞いたのです、同期がいるし曹学派閥は縦横の情報網が強いのですよ。ナンバーにWACが入る話も、9月には聞いてましたから。ウチに決まったのは11月らしいですけどね」
「へ〜」感心したようにうなる田浦3曹、「へぇ〜ボタンがあったら押してるなぁ」
93 名前:まいにちWACわく!その11 投稿日:04/02/07 19:01
そうこうしてるうちに1t半が到着した。運転席から降りてきた隊員が後板を下ろす。
隊員たちが吐き出されるように降りてくる、赤城1士は…いた、WACの制服を着て荷物を下ろしている。衣納と衣装ケースがひとつのようだ、他の荷物は逓送されて、昨日のうちに部屋に運び込んでいる。
「山田1士、こっちだ!」「後藤1士、ようこそ本管へ!各中隊の先任が隊員を捕まえている。「赤城1士!いるか?」いないわけはないのだが先任が呼ぶ。
荷物を持った赤城1士が先任、田浦3曹、中村3曹の前にやってくる
「1等陸士、赤城龍子、ただいま着隊いたしました!」
荷物を下ろしそう叫ぶ
身長は160前後、体型は太ってはいないが痩せてもいない。拳には空手経験者らしく少し券ダコが浮かんでいる。
髪型は少し襟足にかかるくらい、当然黒髪、やや浅黒い肌は訓練の成果か?目は細く全体的には広末涼子に似ている。まぁそこまでかわいくはないが、普通科ではマドンナで通じるだろう。
全般的に健康的な感じで、エリート一族にありがちな嫌味さは感じられない。
「ようこそ!」先任が手を差し出し握手を交わした。「私は先任の佐藤准尉だ。隣が田浦3曹と中村3曹だ」
「よろしくな!」 「よろしくね♪」 こうして赤城1士は着隊した、波乱の幕開けになるのだろうか?
94 名前:まいにちWACわく!その12 投稿日:04/02/07 19:17
「とりあえず荷物を置いて食事に行きなさい、中村3曹案内頼むよ」
「わかりました!」元気はいい。
「1300に中隊に来てくれ、中隊長の面接などがあるからね」「あと携行書類をちょうだい」田浦3曹が封筒を受け取る。
「じゃあ頼むね中村3曹」「わかりました」そういって先任たちは中隊本部に向かって帰った。
「来ましたよ、これ携行書類です」田浦3曹が人事担当の倉田曹長に封筒を渡す。
「どんな体型だった?」補給の村上2曹が聞く「いきなりセクハラっすか〜?」「バカヤロウ!被服の請求とかあるんだよ」
先任は中隊長室に入り報告している。
「そうか、来たか…」中隊長がつぶやく「どうだ?印象は」「特に問題は無いように思います。嫌味なところもありませんしね」先任が答える。「顔は?かわいいと思ったか?」「へっ?はぁ…私の年になると子供のようなものですからね。よくわからんです」「田浦に聞くか…」
中隊長室を出た中隊長と先任は、事務所に入り田浦3曹を探す。他の本部要員に質問攻めにあってるようだ。
「盛り上がってるとこすまんが…」中隊長が口を開く。「田浦、赤城1士はかわいいと思ったか?」若干26歳の田浦3曹は「ええ、思いましたが?」と答えた。
「そうか…」眉間に深いしわを寄せて中隊長が帰っていく。「何ですかね?」「色恋沙汰を警戒してるんだろうな」「はぁ…三島とか危険要素がいっぱいですもんね〜」中隊長の苦悩は続くようだ。
96 名前:専守防衛さん 投稿日:04/02/07 19:47
三島士長は隊員食堂に向かっていた。今日は連隊作業員として中隊から1名特命を受けていた。そんな目にとびこんで来た赤城1士 「悪くないじゃん」歓迎宴会が楽しみになった。
97 名前:とっぴぃあ 投稿日:04/02/07 20:08
「中隊長、赤城1士です」と先任が言う。「おぉ、では、面接をしよう。先任、君も一緒に入室してくれ」
「私もですか?」と先任 「あぁ、中隊長室で服務指導、もろもろ指導してくれ」
「解りました」 と言い 面接は始まった。
99 名前:専守防衛さん 投稿日:04/02/08 11:45
「え〜と、え〜〜と中村3曹。あの〜〜さぁ、突き合ってる子といてるんか?・・・じつは・・」バキッ・・・・ドスン。
次の瞬間田浦3曹の体は壁に張り付いていた、中村3曹はこう見えても柔道三段空手道2段。高校時代は国体の常連選手だった腕前。並の男では力加減が微妙ところである。
「あ〜、ひでぇなぁ。いや、違うてば、違うでば。彼女だょ。彼女。赤城一士。」
「ごめ〜ん、なんのことかと思った。いきなりびっくりさせないでくださいよ。」ちょっと紅い顔して答える中村3曹である。
「知ってると思うけど、うちの中隊、三島士長とか馬鹿が多いだろ・・。だから先任やら中隊長やらみんな心配してんだよ。事が事だけに言いにくいし。」
「じゃ、聞いときますよ。朝霞の同期がなんか知ってるかもしれないですし。」
「有り難う、たのんますは。」痛む腕と肩を押えながら中村3曹と別れる田浦3曹。体は痛むが心の中で何かが変わった。
100 名前:専守防衛さん 投稿日:04/02/08 12:00
昼食を食べ終わった三島士長 まだ時間があったので生活隊舎へ行った。飯島士長がいる。「その顔は来たワックと対面したろ?」
三島はニコッとし「なんか、やりがいある気がするんですよねぇ」
おぉ〜!飯島以下の声援が三島の胸に響く。
101 名前:専守防衛さん 投稿日:04/02/08 13:07
赤城1士の中隊長面接が始まった。「君には、通信補佐としてやってもらうよ」一瞬、赤城1士の顔から笑顔が消えた気がしたが。嫌、気のせいだろう。すぐに「はい、頑張ります」と元気な返事が来た。
102 名前:専守防衛さん 投稿日:04/02/08 16:07
番外編 赤城一士のパパ 「うちの娘、自衛隊はいったよ。」
部下「はい、確か陸でしたよね?」「そうなんだ、色イロ心配あるが、水虫だけはならないでほしいよ」
部下「職業病らしいですからね、陸さんは」
赤城パパの夜は吹けていく 番外編 終わり
103 名前:まいにちWACわく!その13 投稿日:04/02/08 16:47
赤城1士が中隊長の面接を受けている最中、中隊本部事務所では…
「今のが赤城1士か、なかなか可愛いんじゃないか?」「空手2段には見えんな〜」いろいろ話が飛び交っている。
「たー坊!これは訓練だな?」倉田曹長が書類の中から検定記録簿を出す。「あ〜どうも!」田浦3曹が受け取る、「どれどれ…」
「体力検定1、腕立て伏せ102回の腹筋104回、3000mは10分33秒
体力検定2、斜懸垂89回の幅跳び5m10、ソフトボール投げは66mか…」
「化け物か?」少し驚いたように村上2曹が言う、「並の男じゃ勝てんな」
「おや、射撃も当たってますよ」これまた驚いたように田浦3曹が言う「初級検定、50点満点中48点、これはすごいな…」
「だがな、カタログスペックで自衛官は語れないからな」横で聞いてた倉田曹長は言う「高橋尚子でも夜中に20kgの荷物背負って30km歩けんだろ?高見盛だって山に入ったらただの的だからな」少しずれてるような気もするが、確かに一理ある。
「男女の差ってのはなかなか埋めれないですからね」田浦3曹が言う「GIジェーンみたいになれないかな?」
104 名前:まいにちWACわく!その14 投稿日:04/02/08 17:02
中隊長室ではまだ面接が続く。
「家族での心配事とかはあるかね?」「特にありません、みんな健康です」(家族での心配事はあるよ!ウチが…)先任は心で叫ぶ。
「初の普通科中隊WACだから、君も我々も戸惑うところはあるだろう。何かあったらすぐ先任か私、言いにくかったら中村3曹に言うんだよ」「わかりました!」
がちゃ…中隊長室のドアが開く。「じゃあこれからは田浦3曹に駐屯地を案内してもらうから、まだ食堂とWAC隊舎しか知らないだろうからね」先任が言う。「わかりました、案内します」田浦3曹が席を立つ。
「ちょっと田浦…」先任が耳打ちする「通信補佐に配属って言われて少しショックのようだ、フォローしてやってくれ」「フォローですか?」「『がんばれば迫にも行けるかも…』とか言ってくれたらいいよ」「わかりました」
そういって廊下で待っている赤城1士のところに行く「じゃあ行こうか!」
「ここが厚生センター、営業時間は朝の9時から夜の9時までやってるよ」
「ここが業務隊と諸隊が入ってる隊舎、貯金業務もここだからね」
「この辺一帯は連隊の駐車場、自訓に行くまではあまり縁がないかな?」
一緒に駐屯地を歩き案内する。
「あいたたた…腰が痛いや」「どうしたんですか?」「いや、ちょっとね。それより補職は通信補佐って言われたって?」「ええ、そうなんです…」やはり残念そうだ。
105 名前:まいにちWACわく!その15 投稿日:04/02/08 17:14
「まぁ仕方ないよ、みんなはじめての事だからどうしていいかわからないのさ」「それはわかります」浮かない顔だ。
「まずは部隊通信に行ってもらう事になると思うよ。無駄にはならない教育だから安心しなよ」少し微笑む田浦3曹。
「それにまずは頑張りを見せる事だよ。そうすれば迫でも小銃でもいけるさ!」肩を軽く叩く。「わかりました、頑張ります!」少し笑顔が戻る。
「じゃあ最後に通信倉庫に行こうか、岡野2曹って人が上官になるからね」
駐屯地の隅っこ、あまり目立たない場所に通信倉庫はある。一見安いプレハブだが、通信機材を入れているために見た目よりは頑丈である。
「岡野2曹いますか〜?」「おーう、田浦か」「赤城1士を連れてきました〜」
岡野2曹は椅子に座り、なにやら書類に書き込んでいる。「赤城1士です、よろしくおねがいします!」「岡野2曹だ、よろしくな。まぁ茶でも飲んでけ」
備え付けのポットからお茶を3人前入れる。「通信は希望か?」「…あ〜いえ、実は迫希望です」「迫なら通信も大事だからな、無駄な経験にはならんさ」
一服終わってから田浦3曹と赤城1士は中隊本部に帰ってきた。
106 名前:まいにちWACわく!その16 投稿日:04/02/08 17:29
「案内終わりました」「おう、ご苦労さん!じゃあ赤城1士、部屋に戻って荷物の整理とかしなさい。終礼時にみんなに紹介するから、1640には戻ってくるようにね」
「で、どうだ?元気になったか?」先任が聞く「大丈夫みたいですよ、前向きな子ですね〜」感心したように田浦3曹が言う。
「実際、中隊長は彼女を迫で使うんですかね?」「それも考えてるようだ、何か知らんが中隊長もハラを決めたって感じだな」師団長との一件は誰も知らない、連隊本部で緘口令が敷かれたようだ。
「明日は朝から連隊長への申告がある、制服を用意させないとな」
そして終礼…本部と各小隊ごとに整列し、係が連絡事項を言っていく。
「明日については午前中は射撃予習、昼からは整備と体育、以上です」田浦3曹が訓練指示を終わる。
「では先任」中隊長が促す。「では本日付で着隊した赤城1士を紹介します」先任が赤城1士を呼ぶ。
「本日付で配属されました赤城1士です、一日でも早く中隊の一員となれるよう頑張ります!」拍手を受け敬礼する。
先任は隊員たちの顔を見る。少し緩んだ顔、不満そうな顔、獲物を狙うハンターの様な目も見える。
(警戒は必要だな)そう先任は思った。
107 名前:まいにちWACわく!その17 投稿日:04/02/08 17:36
課業後…中隊長室に先任と田浦3曹が入り、ドアを硬く閉ざした。
「とりあえず一日目は何事もなかったな」中隊長が口を開く「まぁ第一段階はクリアしましたね」先任が続ける。
「まず明日は、被服や武器の交付があるな」「それと申告です、連隊会議室に0750集合ですね。中隊長と私が臨席します」「そうか、わかった」
一息入れて中隊長が口を開く「ところでだ、こないだから頼んでた件はどうだ?」
赤城1士の着隊前に、中隊長は「不穏分子」の割り出しを先任と田浦3曹に依頼してたのだ「だいたいわかったか?」
108 名前:まいにちWACわく!その18 投稿日:04/02/08 17:49
「では自分から、営内陸士の不穏分子は…」田浦3曹が報告する。
「まずは三島士長、危険度はハブ並です」二人ともうなずく「中央音楽祭り支援に出したら、次の年に5人ものWACやWAVEから年賀状がきたヤツですからね」先任が続ける。
「南は九州、北は旭川からだったな…」中隊長も呟く「正式な抗議も無いので、強く指導もできません」先任も渋い顔をする。
「次に坂本士長、飲み屋の姉ちゃんたちをナンパするのが趣味のようなヤツです」「前に営門前で、バーの姉ちゃんにグーで殴られてたな」 「ただ対戦小隊なので、接点は少ないですね」
「次に通信補佐でよく来る野尻士長と具志堅士長、接点が多くなりますから…」「二人とも彼女は?」「いません」
「とりあえず営内陸士はこんなところですね、あと彼女の同期となる1士2士連中ですが…」続けて言う
「10人の新隊員の内8人は彼女がいます。残る二人は松浦1士と須藤2士、ただこいつらは二人とも3小隊ですので接点は少ないです」
メモを置いて一息入れる「危険な連中は以上です。やはり三島が危ないですね」
109 名前:まいにちWACわく!その19 投稿日:04/02/08 17:59
続いて先任が言う「陸曹の不穏分子ですが…」
「まずは3小隊、井上3曹と坂本3曹ですね。井上はイメクラ好き、坂本はキャバクラ好きです」「つまり女好きって事だな?」
「井上は射撃指導係ですので、接点も少なくありません」井上3曹は3小隊のスナイパー要員である。
「坂本は車両整備に回ってます。こいつは大丈夫でしょう」
「次に黒瀬2曹、これまた飲み屋の姉ちゃんをナンパしまくってます」「借金はどうなった?」「何とか完済させました」
「とりあえず危険な連中は以上ですね」
110 名前:20まいにちWACわく!その19 投稿日:04/02/08 18:15
「黒瀬は1小隊だったな」「接点は少ないですね」…少し考え込む中隊長。
「不穏分子はわかった、あとだ…彼女が惚れそうな隊員というのはわかるか?」顔を見合わせる先任と田浦3曹「惚れそうな、ですか?」
「う〜ん、男と女の価値観は違いますからなんとも…」田浦3曹も困り顔だ。
「そうですね、営内陸士なら3小隊の鈴木士長ですね」田浦3曹が少し考えて言う「顔も悪くないですし、レンジャーですからね」
「まぁ真面目なヤツだから、つまみ食いみたいな付き合い方はしないと思いますよ。それに候補生試験の方もありますし…」先任が続ける。
「陸曹なら『アニキ』こと神野1曹ですね」3小隊の小隊陸曹・神野1曹は若干33歳。空挺レンジャーで射撃・格闘とも特級。
難病の妹さんの看護のために空挺から転属してきて3年、卓越した戦技能力と厳しくも優しい性格から「アニキ」と呼んで慕う隊員も多い。
「ただ危険度は全隊員共通して持ってますね。田浦だってそうですよ」先任が言う「え〜WACに興味はないですよ、しかもド官品ですし…」
そう言う田浦3曹だが、一瞬肩の痛みとともに中村3曹の顔が浮かぶ。あわてて首を振り幻影を追い出す。
「どうした?」先任が聞く「いえ、なんでも…」
「まぁとにかく、・処置不穏分子は早めに発見・処置が必要だな」中隊長が言う「我々のEEIは、『不穏分子は誰か?その行動は?』だ」
「わかりました」「了解です」二人が答え、会議は終了となった。
111 名前:20まいにちWACわく!その21 投稿日:04/02/08 18:23
「しかし3小隊の名前ばっかりあがりましたね」と田浦3曹「まぁ若い連中ばかり集めてる小隊だからな」と先任。
「何か理由が?」「10年位前の中隊長の方針でな、『1,2小隊を前衛に、3小隊を遊撃隊として使う』と決めたんだ」
「だから若い佐々木3尉が小隊長なんですね」納得したように田浦が言う「そういや佐々木3尉も危険要素だな…」先任が呟く。
「さて、俺は帰るわ」先任が帰り支度を始める「今日は早いですね?」「重迫と本管の先任と飲みに行くのさ、情報収集だよ」「あ〜なるほど…」
「じゃ、お疲れさ〜ん」先任が事務所を出て行く「お疲れっした〜、自分ももうすぐ帰ります」
112 名前:まいにちWACわく!その22 投稿日:04/02/08 18:35
隊内クラブ「一番星」は、営門のすぐ横にある。平屋1階建てで座敷の宴会場とテーブル、カウンター席に分かれている。
そのカウンター席で先任と本管先任・泉曹長と重迫先任・飯島曹長が並んで座っている。
「WAC来たらしいのぅ、どんな感じや?」広島弁で飯島曹長が聞く。すでに目の前には空になったジョッキがある。
飯島曹長は50歳、四角い体と四角い顔を持ち「千人しばいたから先任になった」と豪語する武闘派である。
「これから苦労しそうですね」メガネを中指で持ち上げて泉曹長が聞く。日本酒をチビチビと舐めるように飲んでいる。
泉曹長は41歳、情報小隊〜連隊2科〜師団2部〜方面調査隊と、ずっと調査畑を歩いてきた。髪を伸ばせば「市役所の職員」で通じる風体である。
113 名前:まいにちWACわく!その23 投稿日:04/02/08 18:53
「重迫にもWACいたよね、どうだった?」先任が聞く「あんまりよくなかったのぅ、うちは二人入ったんじゃ」飯島曹長は苦い顔をする。
「二人っちゅうのは助け合える事もあるんじゃけど、一人が堕落したらすぐもう一人も落ちるんじゃ」
一日限定10個の「馬刺し」を食べつつ先任が聞く「どんな風に?」
「一人は頑張ろうって気があったんじゃ、率先して仕事も覚えようとしとったしな」すでにジョッキ3杯目だ。
「でもなぁ…もう一人が舐めたヤツでな。弾は持てないし有線張らせたら草で手を切ったと大騒ぎ、射撃もヘタクソで書類をやらせたらミスの連発。ありゃひどかった…」
「そんなにか?」「でも努力しようとしちょったら、鍛えてやろうとも思うけんね。あいつは『女だからできな〜い』とハッキリ言いやがった!」ドンと机を叩く。
「もう一人もそんな考えに感化されてな、結局任期満了で辞めていったわ」「二人とも?」「いや、舐めちょったヤツは師団司令部に行きやがった」焼き鳥を口に運ぶ。
「要領ばっか覚えやがって…もうWACなんざいらん!」「声がでかいよ…」先任がたしなめる。
「WAC云々より、個人の資質の問題かもしれませんね」じっと話を聞いていた泉曹長が言う。
114 名前:まいにちWACわく!その24 投稿日:04/02/08 19:02
「本管には今もWACがいるね。中村3曹には世話になるよ」熱燗を注いで先任が言う。「いえいえ、たいした事もできませんで」
「本管のWACはどうなんじゃ?問題ないんじゃけぇうまくいっとるんやろな?」飯島曹長はすでに真っ赤である。
「ええ、まぁウチも受け入れたときはごたごたしましたがね」「例えば?」「そうですね…古手の陸曹が少し甘やかしたのです」酒を舐める泉曹長。
「甘やかした?」「えぇ、キツい指導もなしで…上の陸士長連中は明らかに不満顔でしたね、『俺たちのときと違う!』って」
「今はどうなの?」「通信にWACが入った後に中村3曹が曹学で入ってきまして、泣き言ひとつ言わず部隊通信の教育を終わらせたのです」
「それで意識が変わった?」「ええ、我々も彼女たちも…結局は人によるんですよ、男も女も代わりませんよ」
115 名前:まいにちWACわく!その25 投稿日:04/02/08 19:16
明太子チーズポテトをつまみながら泉曹長は続ける「赤城1士でしたか?真面目そうな子でしたね」「あぁ、真面目だな。血もあるのかね?」
「やはり赤城海将の娘さんでしたか」「知ってるのか?」「元々はP3-Cの乗員で、情報調査のプロですよ。一度勉強会で公演してました、自衛隊屈指の情報の専門家です」
「なんでぃ、先任が3人もそろって湿気た面だなぁ!」ビールを持ってきたのは「一番星」マスターの権藤店長である。
権藤店長は81歳、自称「沖縄戦の生き残り」で「玉音放送を特攻機のコックピットで聞いた」という「ルバング島の生き残り」である。まぁ全部ウソだろうと言われているが…
警察予備隊からずっと自衛隊に在籍し、定年を迎えてから20年以上クラブの店長として働いている。
「先任がそんな面しちゃあいけねえや、部下が不安がっちまうぞ!」ひゃっひゃと笑う権藤翁「ワシが満州で馬賊と戦ってた時なんざぁ…」
「こないだはビルマでえげれすと戦ってたと聞きましたが?」泉曹長は真面目&冷静だ。「おぅ、武勇伝ですか〜」面白がってはやし立てる飯島曹長。
そんな騒ぎをよそに先任は考える(個人の資質か…)
116 名前:まいにちWACわく!その26 投稿日:04/02/08 19:22
同じころ、WAC隊舎屋上…
「もしもし、信ちゃん?」(龍子?元気〜?って今朝別れたばっかりだったよね)同期で同じく普通科中隊に配属された清原信江1等陸士だ。
「どう?配属先は」(だめだめ!「女が何しに来た」ってみんな顔に書いてあるんだもん、龍子のほうは?)「ウチは普通かな?でもやっぱり通信だったよ…」
(それは仕方ないよ〜私なんかいきなり「業務隊に臨時勤務」とか言われたの。あったまきちゃう!)「それはひどいね〜」