まいにちWACわく!その58

佐々木3尉を含む若手幹部のすぐ後ろに入ってきたのは副連隊長だった「もうすぐ定年だよな、あの人…」ボーゼンと呟く片桐2曹、タイムは19分53秒だそうだ
(だいぶ遅れて)中隊長も入ってきた「はぁ〜…ゲェ!」息も絶え絶えにゴール付近の芝生に突っ伏した「大丈夫ですか中隊長?」と声をかけるのは田中士長だ

「お〜先任帰ってきたで〜」「ホントだ…ラストですよ〜先任!」ゴール前に陣地転換した田浦3曹と井上3曹がゴールに近づく先任に声援を送る「田浦3曹!井上3曹も…今までどこに?」赤城士長が声をかけてきた
「舎後で応援しとってん。小隊長どうやった?」「3位に入りったぞ、あの人意外とムッツリだな」と片桐2曹もやってきた「ムッツリ?」「赤城が声援を送った瞬間に加速したんだよ」顔を見合わせて笑う田浦3曹たち「やっぱり黄色い声援やな〜」「そうだな〜」
「そんなもんなんですか?男の人って単純…」少しあきれ顔の赤城士長だ「先任はどうかな?応援してやってくれ」「は〜い、先任〜ラストで〜す」だが加速する様子は見られなかった…

「お疲れ様です先任」芝生に仰向けに倒れている先任に水を持ってきたのは田浦3曹だ「は〜は〜は〜…すまんな〜」体を起こし水を一口含む「年を実感するなぁ。楽させてくれんかな〜」と弱気な顔をする先任だった

最後のランナーがゴールしてパーンパーンと鉄砲が鳴る「連絡します、閉会式については予定通り1630…」スピーカーから声が流れ、応援していた隊員たちもぞろぞろ帰っていった
「田浦〜手ぇ貸してくれ」そう言って手を差し出す先任「お爺ちゃんじゃないんですから…」と言いつつ手を差し出し先任を引っ張り上げる「すまんな〜とりあえず着替えてくるわ」そう言って先任も隊舎に向かって立ち去っていった
「なんかフラフラしてへんか?」「そりゃな〜定年間近なんだから」「副連もですよ〜」後ろで勝手な事を言う田浦、井上、赤城の3人であった


「………」事務所の机に突っ伏している先任、その他の人々も似たような状態だ「野戦病院みたいですね」「残念ながらナイチンゲールはいないんだな」まだまだ若い田浦3曹と田中士長は回復が早い
そんな中やってきたのは…「せ〜んに〜ん、いるかな?」明るい声でやってきたのは1科の渡辺曹長だ「…」先任は机に突っ伏したまま一枚の紙を出す「本日の営業は終了いたしました」と書かれている
「そんな事言わないでさ〜先任」ヒザを壊している渡辺曹長は走っていないので元気だ「なんだよ〜ナベさん…」「ちょっと中隊長と一緒に相談があるんだけどさ〜」「中隊長も死んでるよ、多分…」そう言って席を立ち、二人一緒に中隊長室へ入っていった

「そういうわけで、山中さんは退官したし杉山准尉ももうすぐ定年だし…」「広報の…班長候補が欲しいのか?」「最終的にはそうなりますね」「声をかけてるのはウチだけ?」「いえいえ、各中隊に声はかけてます…」
話は「新しい広報班長候補が欲しい」というものだった。1科長の代理で渡辺曹長が来たのだ「1科長も屍になってましてね」との事だ
「何も今日でなくてもいいのに…」「こういう話は早いほうがいいでしょ〜それに今日ならみんないますしね」「…即答はできんな、しばらく待ってもらえるか?」と中隊長「えぇ、もちろんです」そう言って渡辺曹長は帰っていった

「で、どうしますか?」二人きりになった中隊長室で先任が聞く「そうだな…」眉間にしわを寄せる中隊長「木島を…どうだ?」


「木島曹長?まぁ確かに1科経験もありますしね」「それだけじゃないよ、知ってるだろう?」「えぇ、まぁ…」木島曹長は1小隊の小隊陸曹だが、最低の人格で皆に嫌われているのである
「こないだの音楽祭り支援でもやらかしたらしいからな。総監部にいる久留米(幹部候補生学校)の同期が受付業務の担当だったんだ」方面音楽祭り支援で受付業務を担当していた木島曹長は、暴漢の進入を見てその場から逃げ出すという醜態を演じたのだ
「隊員たちの好き嫌いで上官を選ぶわけにもいかんのは事実だ、だが敵前逃亡する者を小隊陸曹の要職に置くのもな…」そう言ってこめかみを軽く指でもむ「本人が納得しますかね」「させるさ、最悪の場合は命令するからな」

「えっ、広報ですか?」「そうだ、忙しいがやりがいのある仕事だと思うぞ」中隊長室に一人、木島曹長が追加された「え〜あ〜いや、しかし…小隊陸曹の仕事は…」「木村が帰ってきたから心配無用だ」「あ〜まぁ…」言葉を濁す
1科勤務経験のある木島曹長には広報の忙しさを充分知っている。ただ現場もしんどいし…でも部下が一気に少なくなるのも…といった葛藤があるようだ。そこで先任がとどめを刺す一言を口にする
「今の連隊長、連隊本部勤務者は全員A判定出してるらしいぞ」「えっ?」勤務評定でA判定が出ればそこそこ給料が上がるのである

「…わかりました、やってみます」木島曹長はA判定の魔力に屈した「そうか〜ありがとう!8月から入る事になるからな。来年3月までは臨時勤務扱いで…」言質を取ればこっちのもの、とばかりにまくし立てる先任であった


「…ただいまから平成1X年度第1回連隊持続走競技会の閉会式を行います。連隊長登壇…」連隊本部隊舎前で表彰式が始まった「連隊長に敬礼!かしら〜なかっ!」

司会が成績を読み上げていく「中隊対抗の部、優勝…第2中隊」式の最中なので歓声は上がらない「2位、第1中隊、3位…」残念ながら1位にはなれなかった。やはり精強2中隊の壁は厚い「受賞者、前へ」中隊長と代表が一名、連隊長の前に出る
「おめでとう!」と言いつつ優勝トロフィーと表彰状、そして優勝旗を連隊長直々に手渡す。他中隊からは拍手が響く

「個人の部、幹部、1位…」次は個人の表彰だ「3位、第1中隊佐々木3尉、記録18分12秒…続いて陸曹の部、1位…」呼ばれた隊員は前に出て整列する。そして部隊の拍手の中、一人一人が表彰を受ける

「連隊長訓辞、指揮者のみ敬礼」連隊長が各中隊長の敬礼を受ける「休ませ」「休め!」そして長い訓辞が始まる「…(以下略)以上、訓辞終わり!」 「連隊長に敬礼!かしら〜なかっ!」そして閉会式が終わった

2中隊が騒がしい「中隊長を胴上げだ〜!」などと騒ぎ円陣を組む。そして…「わ〜っしょい!わ〜っしょい…」宙を舞う2中隊長。それを横目に各中隊は終礼場所に向かう

「今回は残念ながら2位だったわけだが、かなりの手応えを感じている。次の大会は9月!各人錬成を続けるように!」中隊長の話が終わり、運幹の岬2尉が号令をかける
「中隊長に敬礼!かしら〜なかっ!」こうして長い長い一日は終わりを告げたのだった



「おい!候補生!もっとしっかり走ろ!」駆け足が苦手な三島も今日の持続走競技会には参加している。候補生だから?注目度も違う
回りの激に答えるべく、力をふりしぼりゴールした三島
「ハァハァ」出てくる言葉はなくただ、呼吸が乱れるだけだった


三島は一人、軽く整理体操をすませ、営内へ着替えに帰った。すると、田中士長、鈴木士長が三島を待っていた。「お疲れ」と田中
すると鈴木が「三島士長大丈夫すか〜?」なんて言ってくる


大分息も回復した三島「大丈夫だよ、この調子で行ったら俺、陸教で賞もらうぞ」なんて強気な言葉をだす
「田中士長、一緒に方面総監賞取りましょう」なんて言うもんだから田中も少し困り顔になる
相変わらず口の達者な三島 まぁそこがみんなに愛されるキャラクなのだが。


すると鈴木が「俺をさしおいて行くんだから二人とも、有言実行ですよ!なんて言ってくる
田中は「嫌、俺は無いぞ、賞に無縁なんだよ〜」と言ってくるさらに話を続け「そう言えば三島よぉ、りっしゅうぜん準備大丈夫かぁ?すると三島はオッケーなんす!と声を出すのであった



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