まいにちWACわく!その53

日曜日…いよいよ音楽祭り本番、朝一番で会場にやってきた中隊の面々。会場の駐車場には方面管内各部隊の車両がずらりと並んでいる
高機動車から降り受付にやってきた「さて、準備しますか…」書類やリボン、名札など必要なモノを机の上に並べていく「あと、自分の服装も点検な〜」大沼3曹の指示が飛ぶ
「赤城は体力検定1級持ってるんやな」赤城士長の3種制服の左胸には「体力検定徽章」が光っている
月桂樹に三角形をデザインした、口の悪い人からは「ニセレンジャー」とか言われている。だが体力検定1級を取ったモノだけに与えられる(1年限定)ため、その価値は充分にある
「井上3曹は射撃特級ですね」「コレと記念章が一個だけ…寂しいもんや」左胸のポケットに銃の照星をかたどった「射撃特級徽章」が付いている。その上には紫と黄色の記念章が一つ
「コレは何で貰ったんですか?」「職務遂行の5級、ようするに中隊長から『よく頑張りました』って貰ったんやな」
大沼3曹の胸にはカラフルな防衛記念章が凸型に2段4つ付いている「コレって何でもらったんですか?」と聞く赤城士長
「ん?これか…上の一つは震災(阪神大震災)で貰った4級、下のコレは車両無事故操縦、真ん中は職務遂行の5級、赤いのが10年勤務だな」
一つづつ指を指して説明する「いろいろあるんですね」「いつか貰えるよ。陸曹になる時に一つくれるんだっけな?」記念章を貰うと勤務成績にA判定が出る。すると…「ボーナス上がるぞ」と笑う大沼3曹であった
「ま〜震災で貰うってのも複雑だよな。自衛隊が大活躍って事は、誰かが不幸になってるんだから…」


ステージでは音楽隊員達が最後のリハーサルに余念がない、受付にも音が漏れ聞こえてくる。定番のワーグナー、映画音楽、最近のヒット曲などなど…音楽隊はレパートリーが広い
警備は配置に付き、接遇班もお茶の準備を整える。受付も準備を整えいよいよ開場となった

「といっても行列ができるようなイベントやないけどな」迷子案内の机に座り、まばらな人影を見ながら井上3曹は言う「そうですね〜子供連れとか来ますかね?」と赤城士長
客層はさまざま、明らかに自衛官の家族連れ、企業の社長や重役といった感じのおじさん達、制服を着た高校生の一団は学校の吹奏楽部のようだ
そんな中、知った顔もある「神野1曹!いらっしゃい〜」と受付から声が聞こえ、控え室で休憩してた赤城士長は顔を出す
神野1曹が線の細い女性を連れて受付の人と話している、ロングの黒髪が美しい美人だ(神野1曹の彼女かな?やっぱりモテるよね〜)と一人納得する赤城士長だった

本番まであと少し…まだまだ迷子は出てこない「そりゃこんな狭い会場で迷子は出んな〜これが駐屯地のイベントとかやったら大忙しやけどな」そう言って笑う井上3曹
「じゃあ何しに来たかわかりませんね」と苦笑い「いやいや、でもいないと困るわよ」とは中川2尉だ「万が一…てのもあるからね」
そんな会話をしてる時…受付の方でちょっとした騒ぎがあった


「何で私を知らないんだ!私は自○党員だぞ!貴様ら木っ端隊員なんぞ一言でクビにできるんだ…」なにやらスーツを着た中年男性が騒いでいる
中肉中背で少し太鼓腹、薄汚れた灰色のスーツに埃まみれの靴、はげかかった頭はぼさぼさで目が少しイッてしまってる。ど〜も様子が変だ
「ですから招待状のない方の入場はできないんです…」「貴様ら下っ端隊員じゃ話にならん!私は元陸将だぞ!貴様らの部隊の隊長の名前を出せ!」言う事がコロコロ変わる
こんな時に限って宍戸3佐は席を外している。対応に苦慮してるのは大沼3曹だ「他のお客様の迷惑になりますので…」「私が一番偉いんだ!何を考えてる!」
現時点で受付の先任者は木島曹長だ、が…「アイツ逃げおった!」受付の騒ぎを見ていた井上3曹が小声で赤城士長に言った
受付の机の後ろに座っていた木島曹長は、騒ぎが始まったとたんに席を外し逃げ出したのだ「そんな…」赤城士長も驚きの色を隠せない
当然ながら遠戸2曹はオロオロするだけ。受付の後ろで金魚のように口をパクパクさせている

「仕方ないわね…手伝って赤城士長」騒ぎの場に出てきたのは中川2尉だった。騒ぐ男性の前に立ち「何かありましたか?」と聞く。赤城士長は中川2尉の斜め後ろに立つ
「なんだぁ?女はすっこんでろ!」「私が現責任者の中川2尉です。あなたのお名前は?」胸を張り目を細め冷然と言い放つ。身長170センチの中川2尉は威圧感がタップリある
「な、なんで名前を言わなきゃいけないんだ?!」その迫力に狼狽する男性。まだ20代に見える(ホントは30才)中川2尉の意外な迫力に押されているようだ
「お名前をいただかないと名簿の確認ができません。それとも言えない事情が?」「…て、てめぇみたいな下っ端に言う名前なんか無い!」


「ではお引き取りを願います。大沼3曹、警備に連絡を…」「な、何だと?!」狼狽する男性「わかりました」と言って電話の受話器を持ち上げる大沼3曹
「…て、てめぇら女に使われていいのか?!男のプライドはないのかよ!」「自衛隊は階級がすべてです。男も女もありません。元陸将なら知ってるでしょ?」挑発的に言う中川2尉
顔を真っ赤にして大汗をかく男性。明らかに慌てている「こ、このクソアマ〜!」そう言って中川2尉に手を伸ばし襟首をつかもうとする…その時

斜め後ろに控えていた赤城士長がその手を取り、逆の手で男性のアゴをつかみ上げる「ぐわっ!」と情けない声を出して顔をのけぞらせる男性
そのまま腕を取り背中に回す、背後に立ち襟首を掴みヒザ裏に軽く足払いをかける。跪くような形で男性は制圧されてしまった「動くと痛いですよ」耳元でささやく赤城士長
ちょうどその時、警察官を連れて小野3曹がやってきた「よ〜し、そこまでそこまで…」そう言って小野3曹は男性の襟首を掴み、赤城士長から引き離す
「じゃ、お願いします」「わかりました…さぁこっちに来なさい!」警察官がその男性の脇を抱えて会場の外に引きずり出していった…

「ふ〜怖かったぁ」そう言って苦笑いする中川2尉「ありがとね、赤城士長!」「いえいえ、こんな事しかできませんし」謙遜する赤城士長
ちょうどその時木島曹長がやってきた「あ〜何だぁ、何かあったのか?」としらばっくれる「…」一同誰も答えない。その時宍戸3佐も帰ってきた
「何かトラブルがあったのかね?」「えぇ、実は…」中川2尉と大沼3曹が概要を説明する



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