まいにちWACわく!その48

終礼…各係の指示事項や先任の命令伝達、それに運幹の訓練指示が終わり、ついに陸曹候補生の合格者が発表される
「ただいまよりだい10X期陸曹候補生試験合格者を発表します。名前を呼ばれた者は前に出るように!」先任がそう言って中隊長が名前を読み上げる
緊張の一瞬、壇上に上がった中隊長が名前を読み上げる
「…中隊本部、田中士長!」何カ所からかため息が漏れる。みんなラストチャンスである事は知っていたのである「はい!」大声で返事をして前に出る
「迫、三島士長!」おぉっ、と声が挙がる(ホントかよ…)(マジで?)(やった!あとで500円払えよ)などというひそひそ声が上がる「はい!」そんな声を聞いて苦笑いしながら前に出る

「今回は以上2名が合格した。今回落ちた者も腐らず次に向かって努力するように!次の試験はすぐだからな」と中隊長が言い終礼は終わった


「鈴木落ちたの…?」「マジで…」「誰か『田中・三島合格、鈴木不合格』に賭けてたヤツ!」終礼後の居住隊舎、ざわざわと居室に向かう隊員たちが話している
同じような話題は中隊でも…「鈴木落ちたか…」ガッカリと肩を落とす3小隊長佐々木3尉「まぁまぁ、赤城が行きますから」と神野1曹
「いや〜大本命が落ちたね。中野浩一が落車したみたいなもんか〜」と高木2曹「中野浩一って?」と田浦3曹
「有名な競輪選手だよ。カツラのCMに出てる…」と先任「へ〜…でも何で鈴木が落ちたんですかね?」「それはだな…」と倉田曹長
「体力面、基本教練、それに面接は良好だったが、学科で少しな…」人事班から情報を聞き出してきたようだ「学科?アイツが?バカじゃないですよ」と不思議な顔をする
「いやいや、一般教養と戦技関係は良好だったんだがな…服務関係はほぼ全滅だったらしい」
陸曹候補生の1次試験は国数英理社のいわゆる「一般教養(中学・高校レベル)」と服務小六法から「服務」さまざまな教範等から「戦技」と大まかに3つに別れている
「そりゃ89式の諸元が完璧でも、『6大義務』や『礼式』がダメだったらちょっと考えるな〜」と頭を掻く先任「そうか…意外な盲点でしたね」と肩をすくめる田浦3曹
「ま、あいつはチャンスがいくらでもあるからな。次に期待だな」と倉田曹長が言い話は終わった

(さて、次は音楽祭りか…)三島をどこに入れるかな、と頭を切り換えて考える田浦3曹であった…



スキップ・ビート 番外編・当直室

「いやいやいや、三島クンが合格するとはねェ〜!」
ここは中隊の当直室。本日の当直士長は飯島士長だ。先任士長、それもだいぶ古参の陸士長が上番するとワケもなく緊張した空気が漂う。先程も小銃小隊の若い陸士が緊張の面持ちで外出証を受領していったが、飯島士長を冷やかしに来た三島には関係の無い事だった。
「いやいやいや、自分でも一発で行くとは思いませんでしたよ」
なんだかんだとまんざらでもない様だ。TVを観ながら飯島が言う
「三島、お前の好きな音楽祭り支援だがな、今年も行けるみたいだぞ」
先任士長の人脈だろうか、飯島は断言した。 「音楽隊からのご指名で、今年もチアリーダーの男子隊員は三島が行くんだそうだ。お前なんか手ェ回しただろ?」
三島はニヤリとしながら、机の中にあった「ナイタイ」を見ながら答えた。
「今年も約二ヶ月楽しくやらせてもらいますよ…」
「三島、支援期間中はコンパを期待してるぞ…」
三島は支援の内容を知る唯一の者として、飯島はそのオコボレに預かろうとする者として、淫靡な笑みを交錯させるのであった…

番外編、不定期につづく…


ここは総監部にほど近い100万人都市の総合体育館、ここで方面音楽祭りは行われる。ステージの上では数名の隊員が何故かデッキブラシを持って立っている
某アイドルグループのPVのようにデッキブラシを使ったダンスを披露するのだ
タップダンスのようにブラシを床にたたきつけ、保安中隊のドリルのように高々とブラシを振り回す。けっこう様になってるのが不思議だ
「へ〜うまいもんやなぁ」「お、かっこいい!」「何でブラシなのかね?」ステージから離れたところであれこれ口を出す支援要員の面々
中隊から小野3曹と三島士長が警備支援で他連隊の幹部の指揮下に、そして木島曹長以下10数名が地連の支援で受付業務を担当する
当初の予定よりかなり多く取られたのは、遠方の部隊の交通費が出ないからだそうだ…何かと貧乏な陸上自衛隊である

会場の設営は施設団が担当、受付の設置を昨日の内に終わらせて本日金曜日は演技組の予行が実施されている
時間のあいた赤城士長たちは予行を見せてもらっている。明日は総合予行、日曜日に本番である

音楽隊の演奏は見事だ。歩きながらや一糸乱れぬ行進など、普通の楽団ではなかなかできない事もやる「よくこんな長時間演奏できるな〜」と誰かが感心する
「らっぱ特技を持ってたらわかるんやけど、吹奏楽器はすごい肺活量がいるんやで〜」と井上3曹「それを歩きながら吹くってのもスゴイ技術なんやで」 「そうなんですか〜」と感心してみせる赤城士長。そうこうしてるうちにプログラムが終了した
「なかなか面白かったな〜」感想を言いながら席を立つ面々、その時「お前ら遊んでんじゃねぇよ、あー?」という声が聞こえてきた


全員が露骨にイヤな顔をする、木島曹長が甲高い声でヒステリックにまくし立てる「遠戸ぉ、ちゃんと受付の準備とかしてんのか?あー?」
遠戸2曹が慌てて「し、し、してます」としどろもどろに答える「遊びにきたんじゃねぇんだぞ、あー?」話も聞かずに文句を言う
「宍戸3佐に許可をいただきました」大沼3曹が答える。宍戸3佐は総監部所属、受付業務の全般統制をしている
受付場所の準備・清掃も終わり、休憩してた隊員たちに「予行見てきなよ」と送り出したのが宍戸3佐だった
その時、木島曹長は準備もそこそこに師団司令部時代の上官とお喋り(ゴマすり)をしていたのだった。さすがに上官の指示だと文句も言えない、グッと言葉に詰まる
「じゃ、みんな受付に帰るか」木島曹長を無視するように大沼3曹が声をかける。全員がついていくのを横目で見ながら「何で連絡しねぇんだよ、あー?」と遠戸2曹に絡む木島曹長

「お前が指導するんだろうが、何やってんだよ〜あー?」帰る道すがら、ずっと絡み続ける木島曹長「あ、い、いやぁ、あの…」としどろもどろの遠戸2曹
伝令時代の恨みからか大沼3曹の木島曹長に対する態度はかなり悪い。露骨に睨みつけ返事もそっけない、必要最小限しか喋らないと言う態度を徹底している
それを知ってか木島曹長は矛先を遠戸2曹に向けている。こっちに来てからずっと泣きそうな顔をしている遠戸2曹であった


赤城士長たち音楽祭り支援組は総監部近傍の駐屯地に宿泊している。支援する人員が多いため総監部だけでは宿泊場所が足りないのだ
他部隊も入ってきているため駐屯地の売店は大変な混雑だ。赤、緑、青、黒、オレンジ色etcetc…部隊それぞれのカラフルな識別帽が右に左に動き回る
「まったく、ジメジメうっとうしいよな〜」「消えてくれね〜かな?」「実戦になったら後ろから撃ってやりたい…」売店にやってきた面々が好き放題言っている
当の木島曹長はクラブで知り合いと飲んでいるらしい。かわいそうに遠戸2曹が巻き込まれ連れて行かれた「オレも危なかったわ〜何とか逃げ切ったけどな」と笑うのは井上3曹だ

「あんな人が陸曹なんて…」と憤慨するのは赤城士長だ「最低ですね!」とはっきり言い放つ「だから言ったやろ〜?『最悪3兄弟』って…」と井上3曹
「昔からだ。アイツと話す時は強気でいくんだぞ、そうすれば声をかけてこないから」と大沼3曹「自分より強いヤツには絶対に声をかけてこないから」
「今日もひどかったですもんね〜あのゴマすり…」予行を見終わって受付に帰ってきた後、宍戸3佐に「しっかり予行をやらせますから〜」と言って何時間も受付の予行をやらせたのだ
「気付いてるのかね?宍戸3佐…アイツがどういう人間か」大沼3曹がため息をつく「ま、期待しましょう」気楽に井上3曹が言い放った

「龍子〜元気してたぁ?」後ろからかけられた声に3人が振り向く。そこには曹学のバッチを付けたWACが3人立っていた「わ〜久しぶり!」そう言って3人に飛びつく赤城士長
「久しぶり〜元気だった?」「普通科どう?しんどいでしょ〜」「基通はずっと椅子に座りっぱなしで…」と四方山話に花が咲く
やれやれと肩をすくめる二人「先行ってるぞ〜」と大沼3曹が言う「あ、は〜い!」と返事もそこそこに話を続ける赤城士長だった



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