倉田曹長残留編 「1、1、1、2!」と新教隊員の声が聞こえる。新隊員かぁ・・・
右を見ても左を見ても、人はいない事務室で一人物思いにふける。「あの中からうちに来るのも何人かいるんだなぁ」とつぶやき昔を思い出す
今から、20年前 倉田2士 「おい!倉田!掃除が甘いぞ!」怒鳴られる倉田くん
先任士長の三島武市が怒鳴る。新隊員前期で施設科を希望していた倉田には毎日が地獄であった
そんな時・・・ もう一人の先任士長 加賀美が倉田2士を連れ町の居酒屋へ連れて行ってくれた・・・
加賀美「おい、せっかく外出させたんだ!今日はとことん飲めよ!」倉田「はい!」でも?なんで俺だけ連れてこられたのかな?そんな疑問がある中、瓶ビールが運ばれて来た
居酒屋にて。「おまたせ、しました〜」運んで来たのは、20代前半だろう
若い娘サンだった 加賀美「おい、あの子どうだ?」倉田「はい?」どうだと言われ戸惑う
「かわいい感じな子ですね」
だろ?と加賀美 倉田、お前、あの子を誘えよ!
「えっ!なっ?なんですか?」加賀美はあわてて、「嫌、実はな、あの子を気に入っててな、だけども誘えないんだよ。でだ、少し酔ったお前があの子に絡む
で、俺が止める で仲良くなる。と言う寸法だ」倉田「・・・」
結果は・・・ 加賀美の小細工の効果か?倉田の迫真の演技がよかったのか
加賀美と娘サンはデートをする事となったのだ。
こんな事をふと思いだしていると・・・ 「おい!おい!倉田!倉田曹長」と呼ばれる!はっ!と我に帰り事務室入り口を見ると・・・
定年をまじかに控えた4科の補給班長が立っている「どうしたんだ?ぼーとして。」「いえ、昔を思いだしていたんですよ。加賀美2尉」「奥さんは元気ですか?」
倉田曹長 残留編 終わり
残留編少し追加
日も西に傾き、そろそろ終礼の時間のようだ。新隊員達も列を作っている「ちゃんと横見ぃよ〜」「村田!前とずれてるんがわからんか!」助教達の声が飛ぶ
一時期甘くなった教育だが、最近の不景気でまた厳しくなっている。暴力は御法度だが、助教達はその迫力だけで新隊員達を従わせている
我が中隊からも支援助教が数名出ている。さてさてどんな連中が入ってくるか…
「倉田曹長、終礼しましょう!」自教に行ってる陸士が声をかける、残留者の長は倉田曹長なのだ「よし、終礼だな」
課業外、当直の倉田曹長は風呂場に向かう。夕方の涼しい風の中、風呂場前のベンチで新隊員連中が風呂上がりのジュースを飲んでいた
「よっしぁあ、勝った〜!」「あ〜くそ!3連敗…」数人でジャンケンをして、負けた者が全員分のジュースをおごる「ジュージャン」だ
(3連敗とは気の毒に…)新隊員の給料はそう高くない。まぁ使う機会も少ないのだが…倉田曹長を見かけ一斉に「ご苦労様です!」と敬礼する
「ん、ご苦労さん」答礼をして風呂場に入る倉田曹長
風呂場は2000まで開いてるので、新隊員はだいたい1930頃まで自主トレをしてから風呂に来る事が多い。風呂場の中も新隊員で一杯だった
(ほう…)イヤでも目に付く彼らの体を見て感心する倉田曹長(4月に比べて引き締まったもんだ)4月の当直の時に見たブヨブヨした体の新隊員はいなかった
「体重減ったぜ〜」体重計に乗り喜んだように言う新隊員、鏡の前でポーズを作ってみせる新隊員、割れた腹筋を同期に自慢げに見せる隊員もいる
(若い内はいくらでも鍛えられるからな…今のウチに頑張れよ)少し出てきた腹をさすり、倉田曹長は風呂場に入っていった
翌朝…今日は演習部隊が帰ってくる。めざましテレビを見ていた倉田曹長の元に「今から出発します」と田浦3曹からの電話があった
(さて…)倉田曹長は筆と墨と半紙を出す。そして…「『演習お疲れ様でした!残留者一同』…と」見事な達筆で書き記す
(コレを事務所前に張って…と)さぁまた明日から忙しい日々が始まるな〜と実感する倉田曹長であった