まいにちWACわく!その34

宿営準備も終わり昼飯の時間となった。各人が駐屯地から持ってきたコンバット・レーションをほおばる
昼からは演習場整備、中隊の割り当ては…「トーチカ道のこの範囲、側溝から2mの草刈りです」岬2尉が地図を使い各小隊長・上級陸曹に説明する
各小隊の編成を崩して、中隊まとまって整備を実施する。高機動車や中型・大型トラックが整備範囲に向かう

現地に到着「では整備を始めます。草刈り機は陸曹以上で扱って…」整備の長になった(押しつけられた?)のは佐々木3尉だ
「集めた草は一カ所にまとめて、あとでダンプに積載して捨てに行くからね〜」と指示を出すのは田浦3曹だ。中隊本部で一番若いので、こういう作業ではよく出てくるのである
こういった作業に慣れた陸曹が草刈り機を扱う。エンジンの音が演習場に響き草刈りが始まった
ベテランの陸曹達は器用に木や岩をさけて地面スレスレを刈っていく、子供の背丈ほど成長した雑草が次々と倒れていく。回収するのは若い陸士達だ
「お〜い、あんまり草刈り機の近くに寄るなよ。小石とか飛んでくるからな〜」片桐2曹が近くで作業してた若い陸士に声をかける「は〜い」素直に場所を空け別の場所の作業に当たる
「何か順調だね〜」指示をする必要もない佐々木3尉はヒマそうだ。その時…


「うわ〜!」「危ない!危ないって!」「遠戸2曹、ストップストップ!」1小隊の面々が作業してた範囲で悲鳴が上がる
「!何事!?」佐々木3尉が悲鳴の上がった方向に向かう。近くで作業していた隊員も何事かと首を向ける
「危ないですよ遠戸2曹!」陸士に言われてるのは1小隊・遠戸2曹だ「どうしました?」やってきた佐々木3尉が声をかける
「え、あ、い、いや…その〜…」要領を得ない遠戸2曹「草刈り機の歯が地面を噛んで…」説明するのはそばにいた陸士だ
足元を見ると見事に地面がえぐれ土や小石が散乱している。草刈り機の鉄の歯も見事に欠けている「けが人は?」佐々木3尉が尋ねる「いません」誰かが答える
「あ、あい、いや…」遠戸2曹は金魚のように口をパクパクさせているだけだ「ここの草ならワイヤーで充分では?」やってきた田浦3曹が言う「鉄の歯は危ないですよ」
「も、もともとつ、付いてたから…」言い訳する遠戸2曹。みんな「…またか」という顔をする
「遠戸2曹は草を集める方に回って下さい、自分が草刈り機を扱います」田浦3曹が草刈り機を奪うように受け取る

その様子を見ていた井上3曹に赤城士長「3兄弟の2人目、『ジ・エンド』こと遠戸2曹や」井上3曹が言う
「作業をやらせたらあんな風になってまう、射撃やったら8習会で屋根を撃つ、ジープも2台ぶつけとる、終わってるやろ?」
「…陸曹ですよね」「しかも2曹や」「…何で?」赤城士長の疑問ももっともだ「ああいう人でも陸曹になってまう時代もあったんや…」ため息をついて井上3曹が言った


翌日、朝の5時。朝焼けの中集合してるのは軽迫の射撃時に演習場の警戒をする「警戒員」達だ
「では各人の配置は…」長は片桐2曹、警戒員は若い陸士達がメインだ。赤城士長もその中にいる「車両・人員とも通過はオレの指示を仰ぐように」そう片桐2曹が言う
「無線機もチェックすること…よし、では出発!」全員が高機動車に乗り込む、ドライバーは田浦3曹だ。演習場にある各警戒ポストに人員を配置していく
警戒員は演習場の出入り口と、射撃時に立ち入り禁止となる範囲に向かう道路に配置される。車両の通過等は「警戒長」に許可を受ける必要がある

「神野1曹の生存自活訓練、受けたかったな〜」後部座席でぼやくのは赤城士長だ。射撃に関係ない隊員は神野1曹の「サバイバル訓練」を受ける予定だ
「まぁまぁ、明日もあるから…」そう言って慰める田浦3曹「さ、着いたよ。準備できたら中継に連絡入れるようにね」そう言って赤城士長を下ろす

全員の配置が終わり、警戒長の高機動車は軽迫撃砲の射場に到着した。迫小隊は射撃準備に走り回っている「さて、一日何もなければいいがな〜」そう言って片桐2曹は無線機に手を伸ばす
「こちら警戒長、各人の配置状況送れ」無線で指示を流し、中継がそれを全員に伝える「第1ポスト、異常なし」「第2ポスト、異常なし」…各ポストが報告を寄せる。ところが…
「第5ポスト!異常の有無送れ!」なかなか第5ポストが出ない「こちら〜第5〜ポスト〜いじょ〜なし、送れ〜」かなり間延びした答えがやっと返ってきた
「…第5ポストって…」片桐2曹が声を低くして呟く「えぇ、彼です…」田浦3曹も呟いた


ドン!…ドン!と軽迫の射撃が続く。今のところ異常なく射撃は続く
「このまま何もなければいいな〜」片桐2曹が読んでいた週刊誌を放り投げて言った「ですね〜」文庫の小説を読んでいた田浦3曹も相づちを打つ
と言った瞬間、その「何か」が発生した

ザッ…無線機に電波が入る「こちら〜第5〜ポスト〜、普通の車〜1台〜入りました〜おくれぇ」高機動車の中が一瞬沈黙した
「…『入りました』?」田浦3曹がボソッと言う「こちら警戒長!入りましたとはどういう事か、送れ!」片桐2曹が無線機に向かって叫ぶ
「普通の〜車です〜おくれぇ」「民間車両であるか?送れ!」
「そのと〜りですぅ、おくれぇ」「…何故通した!送れ」
「用事が〜あった〜そうですぅ、おくれぇ」「…今後、車両を通す際は警戒長の許可を受けよ!送れ」
「りょうか〜い」ホントに了解したのか不安になる返答だ「まったく…田浦」「了解、第5ポストに向かいます」そう言って高機動車のエンジンをかける


第5ポストは演習場の外周沿いにある。万が一ここから入った車も、次の第6ポストで停める事ができる「お〜い、赤城!」第6ポストに到着し、片桐2曹が声をかける
「ハイ!」第6ポストは赤城士長が付いている「民間車両が入り込んだらしい、よく見ておいてくれ」そう指示を出し、さらに先の第5ポストに向かう
「…ん?あれじゃないですか?」田浦3曹が言う、こちらに向かってくるのは軽の4WDだ「止めて話してくるわ」そう言って片桐2曹が高機動車から降りた

道路の真ん中に立ち腕を振る片桐2曹、軽が止まり中から人が出てくる。少しずんぐりしてるが髪が短く体格がいい。片桐2曹はピンと来た(同業者?)
「私有車でスマン、演管の山田曹長だ」そう言って身分証を出す(やはり同業者か…)少し安心した片桐2曹だった
演習場管理班…通称「演管」または「演管班」と呼ばれる彼らは、演習場を管理する駐屯地の業務隊に所属している。その名のごとく演習場の管理が仕事だ
「何かありましたか?」「ちょっとここに行く用事が…」「ここなら…この道に回って下さい」地図を見て指示を出す片桐2曹
「了解、ところでこの先のポストの警戒員は大丈夫か?」やはり言われた…「簡単に民間車両入れたらダメだよ〜」そう言って笑いながら山田曹長は立ち去っていった

「…直接言ってやらんと気がスマン!」片桐2曹はかなりご立腹だ「行きます?第5ポストに…」「…あんまり長く外にいられんからな、帰るか…」 高機動車は射場に向かって走り始めた

ザッ「こちら第6ポスト、軽の4駆1両、乗車者は演管の山田曹長とのこと、目的地西の台、通してよいか、送れ」赤城士長から無線だった
「通してよし」返信を出す「了解」

「まったく…赤城の方がよっぽどしっかりしてるよ。どうなってんだ?あの小畑士長は…」片桐2曹がボソッと言った
「ま、オバQくんに期待しちゃあいけませんよ」「アイツを警戒につけたのはお前だろうが…」「他にいなかったんです…」申し訳なさそうな田浦3曹であった



BACK HOME NEXT