年が明けて、訓練始めは、寒い中上半身裸で、隊内6キロ走がいつもの習わしだが、今年はワックがいるのでみんな迷彩シャツを着ている
しかし、やはり寒い 本部要因からはブーイングもでるそんな日の午後
中隊長以下主要な職務はMMをした
内容は予備自訓練隊受け入れについて 日程については一月から三月
月2回 一週間の予定で計六回 「落ち着く間がないなぁ」先任は胃が痛くなる
「じゃ、各係、要因はたのんだぞ!」中隊長の激の元、皆やる気はあるようだがやはりいい顔はしていない
明けましておめでとう! と寒風吹く中、中隊長の挨拶で始まった新年
訓練初めは六キロ走 上半身は迷彩Tシャツ
下迷彩ズボン 半長靴 雪は無いとはいえ寒い
さすがは1月 そんな中 補給 東野 支援、三島の二名お汁粉を調理していた
威勢良く歩調を数得る声が聞こえる そんな中お汁粉組二名は
東野「三島〜なんでお前走ってないんだ?」三島「俺すか?明日から師団の記念日支援なんで、除いてもらったんです、風邪引いたら大変ですからね」
「田浦との取引か?」「いやだなぁ、取引だなんて。話合いですよ」
そんな中、駆け足を終え皆戻って来た 皆、寒そうな顔をしていた
特に目立ったのは赤城だった 体力こそ、へたな男に負けないものの、さすがは女の子
冷え性気味なのか 少し青い顔をしている
暖かいとこ食べてなぁ!東野の声で着替えを終えた隊員達はみな、お汁粉に飛びつく
「暖まる〜」と言う声がそこらから飛んでいる
さて、次は予備自受け入れだな 中隊長が先任に一言伝えた
次の日 三島は田浦が運転する小型車に乗り師団司令部へと旅立った
赤城が寂しそうな顔をしたのは気のせいだろうか?)なんて事を感じながら運転している
等の三島は、相当変な期待しているようだ
「田浦3曹、師団の記念日って事は当然師団勤務の子達はもちろん・・・」「おい!行く前から何余計な心配してんだ!仕事だからな!判ったな!」「判ってますって〜ただ、気になるんだよなぁ〜師団長以下のメガネにカナッタ僕の恋人達よ〜」駄目だこりゃ
田浦はこう思った
(やれやれ、まったく三島は…)ハンドルを握りつつあきれる田浦3曹であった
(今さらながら思うよ。赤城がこいつの毒牙にかからなくてよかったなぁ)「何考えてるんや?」後ろから声をかけたのはさっきまで寝てた井上3曹である
「いや、何にも…」「同期やないか〜隠し事はわかるで!」この勘の鋭さがスナイパーの所以か
それでも「何もない!運転させろって…」と田浦3曹は答えた、昨日の課業外のことを思い浮かべながら…
「赤城〜ちょっといいか?」終礼が終わり国旗が降りた後、田浦3曹は赤城1士を呼び出した
「はい?何かありました?」「来週から部隊通信だったな、コレ貸してあげるよ」そういって差し出したモノは、普通科通信のバイブル「普通科通信必携」だった
富士でしか売ってない「資料」だが、訓練はなぜかこういうモノを隠し持っている
「部通なら絶対に役に立つから持って行きな」パラパラとページをめくる赤城1士「…わ〜これはいいですね、ありがとうございます!」そう言ってピョコンと頭を下げる
「よかった、少し元気になったか?」少し笑って田浦3曹が尋ねる「年末は元気なかったからなぁ」
「そんな事は…あったかも」照れたように答える「自衛官って何なのかな〜ってちょっと思っちゃったんですよ」
二人は隊舎の外にある自販機コーナーの前まで移動してきた「はいコーヒー、実家に帰った時、お父さんとかはいなかったの?将官の人なら答えが出ると思うけど…」
「父は付きあいがあるとかで…地方総監ってけっこう名士らしいんです」コーヒーを口に運びながら赤城1士は答える「そのかわり兄たちは珍しく勢揃いしましたけどね」
「新年明けましておめでとうございます」ここは赤城家のお座敷、12畳くらいある部屋も祖父母・母・兄3人・弟1人が入ると狭く感じる
「いや〜久しぶりに全員そろったのぅ、なぁ婆さんや」上座に座る祖父・龍太郎はさっそく日本酒を飲んでいる
「おじいさん、龍彦がいませんよ」祖母・えつ子はおせちを口に運ぶ
「龍彦さんは忙しいみたいで…ま、『亭主元気で留守がいい』とか言いますけどね〜」母・純代はご飯をよそう
「正月早々仕事とは…偉くなんてなるもんじゃねぇなぁ」刺身をほおばるのは長男・赤城純一2等海尉である
「潜水艦乗りは正月に仕事無いの?そんなわきゃ無いわな〜俺たちだってアラート待機してるんだから」次男・赤城翔次郎3等空尉はお代わりのご飯を受け取る。F15パイロットらしく筋骨隆々だ
「ま、お互い忙しいという事で…エビフライいただき!」箸を伸ばすのは防大4年生の3男・赤城三吉である
「あ〜取ってたのに…」影の薄い4男・健四朗は高校1年生、兄たちと比べておとなしい文才肌である
正月早々大騒ぎの赤城家の面々だが、なぜか龍子は食が進んでいなかった
「どうしたの龍子?食が進んでないわよ」母が声をかける「食わんのか?なら頂こう」純一が皿の上の肉二手を出す
「…ねぇ兄ちゃん、仕事に疑問を持った事って無い?」肉を取る手を見ながら龍子は尋ねた
「疑問?」母と3人の兄が同時に尋ねた「疑問って?何かあったの?」母が尋ねる「オレはまだ学生のみだからわかんね〜な」三吉はエビフライをかじりながら言う
「ちょっと部隊でいろいろあってね…自衛隊の仕事って何なのかな〜?って思ったのよ」
「そりゃ『この国の平和と安全を守るため』だろう?潜水艦に乗ってたらこの国の平和なんて薄っぺらいモノだってのがよく分かるぞ」「例えば?」「それは言えん…」サブマリナーは口が堅い
「空だって同じだよ。ソ連は無くなったけど、やばい国はいくらでもあるからな」翔次郎はおせちに手を出している
「う〜ん、そういう事じゃなくって…普段の掃除とか点検とか、行事の支援とかって意味があるのかな?ってね」上手く言えないがなんとか説明する
「そりゃ〜あるんだろうな。俺たちには縁がないけどな」「そうそう、だから防大に入ればよかったんだよ」「…幹部ってそういうモノなの?」
「昔は士官と下士官と兵士なんざしっかりわけられていたからのぅ」横から祖父が口を挟む「ワシなんか『海軍少佐』ってだけでモテモテじゃったわい!」ひゃっひゃと笑う祖父・龍太郎
「そういえば外地ではよく遊んだそうですわね〜」そうつぶやくのは横にいた祖母・えつ子である。声は穏やかだが、目が笑っていない
「まだ配属一ヶ月でしょう?これからいろんなモノを見て考えたらいいんじゃない?」母・純代の一言が一番参考になるようだった…
「…と言う訳で、あまり参考にはならなかったです」空になったコーヒー缶を捨てて赤城1士はふぅっと息を出す「幹部と曹士ではやっぱり違うんでしょうか?」
「そりゃそうだろうね。特に海空は専門職の人が多いし…海自なんて風呂まで幹部と曹士でわけられてるからね。ウチにもあるけどあんまり使ってないからなぁ」田浦3曹は夕焼けを見ながら答える
「まぁお母さんの言う事が一番合ってると思うよ。オレだって2士の頃は同じ事を考えたからね」「いずれわかる日が来ますか?」「それは保証できないけど、自分なりに納得して仕事ができるようになればいいんじゃないかな?」
「とりあえず来週からの部通で頑張ってみなよ」「ハイ!頑張ってみます」少し元気に答える
「…絶対なんかヤラシイ事考えてるやろ?」まだ追求を続ける井上3曹「そりゃ井上もだろう?師団司令部の周りは都会だから風俗多いもんな〜」
「うらやましいんか?」「別に〜ほら、着いたぞ」師団司令部のある駐屯地の営門をくぐる「何度きても思うけどさすがにデカいなぁ」感心するのは三島士長だ
「よし、外来はここだな。じゃあ売られた羊さんたち、頑張ってくれよ!」激励(?)の言葉をかけ田浦3曹はもと来た道を帰っていった…
「帰りました〜先任!」田浦3曹が帰ってきたのはちょうど6時過ぎだった「おぅ、お疲れさん!」残っていたのは先任だけだった
「ちょうど今から中隊長と飲みにいくんだが、田浦もどうだ?」「いや〜帰ってきたばっかりなんでご勘弁を…」
「そっか、まぁお疲れさん!」そういって先任は帰っていった