まいにちWACわく!その14

月曜日 「三島〜」呼ぶのは田浦である 「はい、なんです、またまさか臨勤ですかぁ?」と皮肉ぽく言う
「違うよ、金曜日の話しでな、ここじゃなんだから、排煙室行くか」「あぁ、あの話かな?なら大丈夫ですよ」


「大丈夫?なのか?」と心配そうに聞く田浦
「はい、あの時は優しい先輩自衛官ですから、これからも多分、そんな感じですよ」田浦は少しとまどい「じゃあ付き合ってる事はないんだな?」「はい」田浦は安心顔になった


「そうか、わかった。それじゃ話変えるが、年明け、うちの師団の記念行事の支援で一名、うちにあたってる、三島頼むぞ」「え〜っ、やっぱりそんな話すか〜しかたないなぁ」と三島は、困った顔するふりをするが気持ち笑っている
師団の作業 さてどんなワックがくるやら〜



「…だそうです」「そうか…まぁ一安心だな」「やれやれ、中村3曹からの情報がなければどうなっていたか…」
週明け月曜日、中隊長室で額を合わせる中隊長、先任、田浦3曹の3人
「まぁ客観的に見たら、いい先輩になるんでしょうな」先任が言う
「ただ、その先輩が『あの』三島だってこと、そして相手が『あの』赤城だってのが問題なんだ」中隊長は渋い顔だ

あの日、課業外に中村3曹が「赤城が誰かに誘われたみたいなことを言っていた」と陸士から言われたと、田浦3曹に連絡してきたのだ
「まさか…」と思い三島の外出をチェックすると…まさに同じ日に外出していた。あとは駐屯地周辺の「自衛官ご用達」の店を片っ端からチェックしたのが田浦3曹であった

「しかしよく見つけたな」「はっ、この辺はあまり店が無いので何とかなりました」中隊長から評価され胸を張る田浦3曹
「なんなら2科に推薦してやるよ」とは先任の弁「勘弁してください…これ以上事務はちょっと」頭をかく田浦3曹であった


明日は連隊長の年末点検、各中隊も清掃に忙しい。もちろん中隊本部も例外ではなく…
「そろそろ床磨くぞー」「まってくれっ!まだ書類が…」「あ〜パソコンの電源が〜!」「スマン、引っ掛けた!」…とまあこんな調子である
「だいたい年末の忙しい時期に、事務所の点検まで入れるのが間違ってるんだ!」とブツブツ言うのは東野1曹、みんなも同じ意見だが、命令だからどうしようもない

赤城1士は通信倉庫の清掃中、岡野2曹と一緒に有線機材や通信機をキレイに見えるように並べ替えてる
「見栄えだけ整えておけばいいのさ、点検なんてそんなもんだよ」「いいんですか…?何かテキト〜なような…」赤城1士は少し戸惑っている
「陸教ではきっちりやったろ?でも実働部隊でイチイチみっちり清掃してたら、時間がいくらあってもたりないんだよ」そう言いつつ無線機の埃をハケで落としていく
少し困惑した顔の赤城1士(自衛隊ってこんなんでいいのかなぁ…)


「こんなんでいいのよ」キッパリと中村3曹は言い放った「やる事はやる、休むところは休む、それが自衛官の心得よ」
「でも見てくれだけってのは…」「見た目すらキッチリできない組織は、結局仕事もろくにできないのよ。それに規律を守るという意味では、清掃も重要な部分だからね」
WAC営内班には今日は中村3曹と赤城1士しかいない。明日の晩からの休暇に待ちきれずみんな外出したようだ
「で、明日はどうするの?」「営内班に人がいれば、通信庫で立戒してくれって言われました」
「じゃ、明日は通信庫ね。ここまで清掃しても点検は一瞬だからね…」「そうなんですか?」「ビックリするわよ〜」



予備自受け入れ中隊である 訓練の中島 田浦、そして先任は赤城の問題もひと段落ついたので、あらためてこの事について考えてみた
まずは、被服や宿泊の部屋(補給だろ) 次は訓練場所(訓練だな)移動手段で車両だろ
あとは・・・飯と武器だな



さて当日…連隊長の点検は午前中、昼からは連隊終礼をやってから休務になるらしい
「早く帰れるなぁ、いいね〜」岡野2曹は喜んでいる「家族サービスされるのですか?」赤城1士が尋ねる
「そうさ!いや〜娘がやっと立てるようになってねぇ…」事後30分、延々娘さんの話が始まってしまった…

ジリリリリ…倉庫の電話が鳴り響く「そろそろ連隊長来られま〜す」誰かの声にみんな反応し、それぞれの配置についた
「私はどうしたらいいですか?」「連隊長が前に着たら姿勢を正して氏階級を言う、それくらいかな?」

「きょうつけぇ!」倉庫の担当である4科補給幹部が号令をかける「通信機材庫!」場所の報告をする
連隊長を先頭に各幕僚がぞろぞろついてきている、そして各部屋をのぞいて回る
赤城1士のいる倉庫に入り、腕を後ろに組みながら「う〜ん」とか言いつつ部屋を見回る。そして赤城1士の前に来た
「はい、赤城1士!」姿勢をただし大声で叫ぶ「…」2,3回うなずいただけで踵を返し倉庫から出て行った
時間にしてわずか10秒しかなかった

「おわり〜」ドカっといすに座り、岡野2曹はネクタイを緩めた「これだけですか?」赤城1士は当惑している
「こんなものさ、連中も暇人じゃないしな」「昨日1日の清掃はいったい…」
「まだマシさ〜陸幕長の時なんか1週間清掃し続けたんだから」平然と言い放つ「…」何か言いたそうな赤城1士だった



BACK HOME NEXT