まいにちWACわく!その3

曹学は後期教育を陸曹教育隊で行う、それから各部隊に配属されるのである。今回は本管および各ナンバー中隊に一人ずつ配属されることとなり、本管から1t半トラックで迎えに行くこととなった。
到着予定は1130。10分前から舎後に各中隊の先任、営内班長等が集まっていた。
「時間通りに到着するかな?」先任が本管の先任・泉曹長に聞いている。「今のところ予定通りですね」まだ40代前半の泉曹長が答える。
一方、田浦3曹は中村3曹と何やら話している「よろしくね〜何せWACの班長て初めてだから…」「わかりました。ウチの若い子たちもいるから大丈夫ですよ!」少しふっくらした中村3曹が笑う。
「本管のWACは何人いるの?」「通信に陸士が2、陸曹が私だけ、衛生に今年入った子が2人、計5名ですね。全員私の班員です」「5人になるのか…大丈夫?」「大丈夫ですよ、経歴を見る限りしっかりした子ですし、真面目な子と聞いてますからね」
聞いてる?「聞いてるって?何か知ってるの?」「朝霞(女性自衛官教育隊)の助教から聞いたのです、同期がいるし曹学派閥は縦横の情報網が強いのですよ。ナンバーにWACが入る話も、9月には聞いてましたから。ウチに決まったのは11月らしいですけどね」
「へ〜」感心したようにうなる田浦3曹、「へぇ〜ボタンがあったら押してるなぁ」


そうこうしてるうちに1t半が到着した。運転席から降りてきた隊員が後板を下ろす。
隊員たちが吐き出されるように降りてくる、赤城1士は…いた、WACの制服を着て荷物を下ろしている。衣納と衣装ケースがひとつのようだ、他の荷物は逓送されて、昨日のうちに部屋に運び込んでいる。
「山田1士、こっちだ!」「後藤1士、ようこそ本管へ!各中隊の先任が隊員を捕まえている。「赤城1士!いるか?」いないわけはないのだが先任が呼ぶ。

荷物を持った赤城1士が先任、田浦3曹、中村3曹の前にやってくる
「1等陸士、赤城龍子、ただいま着隊いたしました!」
荷物を下ろしそう叫ぶ

身長は160前後、体型は太ってはいないが痩せてもいない。拳には空手経験者らしく少し券ダコが浮かんでいる。
髪型は少し襟足にかかるくらい、当然黒髪、やや浅黒い肌は訓練の成果か?目は細く全体的には広末涼子に似ている。まぁそこまでかわいくはないが、普通科ではマドンナで通じるだろう。
全般的に健康的な感じで、エリート一族にありがちな嫌味さは感じられない。

「ようこそ!」先任が手を差し出し握手を交わした。「私は先任の佐藤准尉だ。隣が田浦3曹と中村3曹だ」
「よろしくな!」 「よろしくね♪」 こうして赤城1士は着隊した、波乱の幕開けになるのだろうか?


「とりあえず荷物を置いて食事に行きなさい、中村3曹案内頼むよ」
「わかりました!」元気はいい。
「1300に中隊に来てくれ、中隊長の面接などがあるからね」「あと携行書類をちょうだい」田浦3曹が封筒を受け取る。
「じゃあ頼むね中村3曹」「わかりました」そういって先任たちは中隊本部に向かって帰った。

「来ましたよ、これ携行書類です」田浦3曹が人事担当の倉田曹長に封筒を渡す。
「どんな体型だった?」補給の村上2曹が聞く「いきなりセクハラっすか〜?」「バカヤロウ!被服の請求とかあるんだよ」

先任は中隊長室に入り報告している。
「そうか、来たか…」中隊長がつぶやく「どうだ?印象は」「特に問題は無いように思います。嫌味なところもありませんしね」先任が答える。「顔は?かわいいと思ったか?」「へっ?はぁ…私の年になると子供のようなものですからね。よくわからんです」「田浦に聞くか…」
中隊長室を出た中隊長と先任は、事務所に入り田浦3曹を探す。他の本部要員に質問攻めにあってるようだ。
「盛り上がってるとこすまんが…」中隊長が口を開く。「田浦、赤城1士はかわいいと思ったか?」若干26歳の田浦3曹は「ええ、思いましたが?」と答えた。

「そうか…」眉間に深いしわを寄せて中隊長が帰っていく。「何ですかね?」「色恋沙汰を警戒してるんだろうな」「はぁ…三島とか危険要素がいっぱいですもんね〜」中隊長の苦悩は続くようだ。



三島士長は隊員食堂に向かっていた。今日は連隊作業員として中隊から1名特命を受けていた。そんな目にとびこんで来た赤城1士 「悪くないじゃん」歓迎宴会が楽しみになった。


「中隊長、赤城1士です」と先任が言う。「おぉ、では、面接をしよう。先任、君も一緒に入室してくれ」
「私もですか?」と先任 「あぁ、中隊長室で服務指導、もろもろ指導してくれ」
「解りました」 と言い 面接は始まった。


「え〜と、え〜〜と中村3曹。あの〜〜さぁ、突き合ってる子といてるんか?・・・じつは・・」バキッ・・・・ドスン。
次の瞬間田浦3曹の体は壁に張り付いていた、中村3曹はこう見えても柔道三段空手道2段。高校時代は国体の常連選手だった腕前。並の男では力加減が微妙ところである。
「あ〜、ひでぇなぁ。いや、違うてば、違うでば。彼女だょ。彼女。赤城一士。」
「ごめ〜ん、なんのことかと思った。いきなりびっくりさせないでくださいよ。」ちょっと紅い顔して答える中村3曹である。
「知ってると思うけど、うちの中隊、三島士長とか馬鹿が多いだろ・・。だから先任やら中隊長やらみんな心配してんだよ。事が事だけに言いにくいし。」
「じゃ、聞いときますよ。朝霞の同期がなんか知ってるかもしれないですし。」
「有り難う、たのんますは。」痛む腕と肩を押えながら中村3曹と別れる田浦3曹。体は痛むが心の中で何かが変わった。


昼食を食べ終わった三島士長 まだ時間があったので生活隊舎へ行った。飯島士長がいる。「その顔は来たワックと対面したろ?」
三島はニコッとし「なんか、やりがいある気がするんですよねぇ」
おぉ〜!飯島以下の声援が三島の胸に響く。


赤城1士の中隊長面接が始まった。「君には、通信補佐としてやってもらうよ」一瞬、赤城1士の顔から笑顔が消えた気がしたが。嫌、気のせいだろう。すぐに「はい、頑張ります」と元気な返事が来た。


番外編 赤城一士のパパ 「うちの娘、自衛隊はいったよ。」
部下「はい、確か陸でしたよね?」「そうなんだ、色イロ心配あるが、水虫だけはならないでほしいよ」
部下「職業病らしいですからね、陸さんは」
赤城パパの夜は吹けていく 番外編 終わり



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