まいにちWACわく!その20(射撃、もしくは日常の光景)

505 名前:まいにちWACわく!その138 投稿日:04/08/02 17:37

次の日…朝イチから武器庫を開けて教習・検定射撃に向かう中隊一同。行く先は近くの山の中にある「極楽山訓練場」だ
極楽山訓練場は3km×2kmほどの広さの訓練場で、中にはレンジャーが使うロープ訓練場やヘリポート、それに屋内射場がある
いくつかの車両に分乗し前進を開始する

「あ〜耳栓忘れた!」「煙草のフィルターで代用したら?」「勝負しようぜ勝負!」「何点取ったら検定合格?」3t半の荷台は騒々しい
いつになくハイなのは、やはり「自衛官らしい=普通の社会人じゃできない」射撃訓練だからだろうか
口では「面倒くさい」とか「射撃後の手入れが…」とか言ってるが、やっぱりみんな射撃は楽しいのかな…とぼんやり思う田浦3曹であった

射場に到着、荷物を全員で下ろして射撃準備にかかる「前段勤務員は配置に…」「警戒旗を揚げてきてくれ〜」赤城士長ら新兵達も言われたままにパタパタ動く
極楽山射場には最新のセンサーが取り付けられており、監的が不要になっている。射撃結果は自動的にプリントアウトされるのだ
「ハイテクだねぇ…もう治痕紙の出番は無いのかな?」感心する先任。紙の的を使ってた時は穴をいちいちシールのような「治痕紙」で埋めていたのだ


506 名前:まいにちWACわく!その139 投稿日:04/08/02 17:38

勤務員が配置に付き、1射群が射撃準備を完了させた「射撃準備完了!」射撃係幹部の岬2尉が中隊長に報告する
「射撃開始!」中隊長の指示を受け射撃が始まった

タン…タン…ドームの中から発砲音が聞こえてくる「始まったね〜」交代係が次の射群を集め銃の点検をしている
「赤城は何射群?」中間姿勢の練習をしてた赤城士長に田浦3曹が声をかける「4射群です。田浦3曹は?」「オレは5射群、まだまだ先だな」
人数を節約する関係上、射撃に必要な勤務員を前段と後段に分け、前段で射撃した者は後段で勤務に就く…というのが一般的だ
ちなみに田浦3曹は後段の的操作である「2射群の薬莢回収員は4射群!」交代係が言う「あ、行かないと…」「気をつけてな」

射手1人には必ず薬莢回収員(コーチ)が付く。実弾の薬莢は100%回収なので、万が一にも無くさないようにするため
それから未熟な射手(新兵など)には、文字通りベテランの陸曹がクリックの修正や姿勢に関してコーチする事も多い
赤城士長の相手は…「…よ〜ろ〜し〜く〜ぅ」小畑士長だ「…は、はい」困った顔を隠すにも隠せない赤城士長であった


507 名前:まいにちWACわく!その140 投稿日:04/08/02 17:40

「おいおい、小畑のコーチに赤城が付くのか…」射場に入ってきた2射群を見て、岬2尉は思わず口に出して言う
「交代させます?」と聞くのは安全係に付く神野1曹だ「…他も全員陸士か。ま、小畑ならまだ大丈夫だろう」

弾倉に弾を込めながら赤城士長は小畑士長の顔を伺う(…)相変わらずのぼ〜っとした顔、身長180cm体重90kgの体はかなり大きく見える
(大丈夫なの?この人…)先輩ながら心配になる赤城士長だった

1射群の射撃が終わり、2射群の番になった「射手、銃弾薬を持ってその場に立て!」岬2尉の号令で待機場所から立ち上がる「射座まで前に進め!」
各人が自分の射座にやってくる「モニター確認」各射座には弾着を表示するモニターがある
「当初、点検射!射手伏せ撃ちの姿勢を取れ」弾着を確認し、標準の調整をするのが「点検射」だ。だいたい3発を3回撃ち調整する
「当初3発、射撃用意!…撃て!」号令がかかりしばらくして「パン」と派手な音が聞こえてくる
薬莢を受け取る網を持ち、赤城士長は油断無く構えていた(もし何かあったら…)銃を振り回したりされないように警戒する赤城士長
そんな心配をよそに小畑士長は3発を打ち終わる
全員が打ち終わったのを確認して「安全装置、銃置け!」岬2尉が号令をかける。安全装置をかけ、脚を立てて銃を置く射手たち
モニターにはすぐに射撃結果が表示され、監的を使うよりかなりの時間短縮となる。小畑士長もモニターを見るが、照星や照門をさわろうとしない
(?)赤城士長もモニターをのぞき込む「…!」モニターに映る的のど真ん中に3発、黒い点が見事に収まっていた


508 名前:まいにちWACわく!その141 投稿日:04/08/02 17:41

2射群とコーチが射場から出てくる「おぅ、お疲れさん。すぐに射撃準備だよ」田浦3曹が赤城士長に声をかける
「あ、はい」置いてある銃を取る赤城士長「…ビックリしました。小畑士長って射撃うまいんですね」ホントに驚いた…と言った顔で言う
「ん?あぁ…ああいうタイプは時々いるんだよ。昔から射撃はぼ〜っとしてる者ほど当たるってね」「そうなんですか?」「何も考えてないからかね?」昨日の佐々木3尉の言葉を全否定する田浦3曹
「体格もいいから銃を押さえ込みやすいしね。その点赤城は不利なんだよな…」銃の大きさは全員同じなだけに、体格の差はけっこう響くのである
「ま、教育隊では当たってるんだ。迷うと当たらなくなるから自信持ってね」「ハイ!」そう言って射場に向かう赤城士長だった

昼食の時間になった。駐屯地から食事を運んできたのは川井2曹だ「残飯処理が面倒くさいから残さず食えよ〜」と若い連中に言っている
「あの3点射ですか…あれで大失敗でした」残念そうな顔をするのは赤城士長だ「弾があっちこっちに…」
「散るんだろ?銃自体も64に比べると軽い上に、2発じゃなくて3発だからね」とは神野1曹だ
一般部隊で行われる中級検定では、最後に「脚使用の伏せ撃ち」がある。64式では連射にして射手自身が引き金から指を離す「単連射(2発)」だ
対して89式は「3発制限点射機構(通称:3点バースト)」があるため、引き金を引きっぱなしで3発を的にたたき込むのだ
銃自体が軽いのと(連射で銃が跳ね上がりやすい)弾数が増えた事から「64より難しい!」との声もよく聞かれる

「まぁ3点射で銃を押さえるコツはいろいろあるんだけどな…また帰ったら教えるよ」そう神野1曹は言う「はい、お願いします」


509 名前:まいにちWACわく!その142 投稿日:04/08/02 17:42

1500ごろに射撃も終わり駐屯地に帰隊した中隊の面々、射撃で使った資材をおろし各人の武器手入れの時間となった
廊下に毛布を敷いて、カチャカチャと小銃を分解・手入れしていく中隊の面々「どうだった?」「いや〜調子が…」「照明が暗くて照星が見えなかった」等々、今日の射撃の感想を言い合ってる
「お〜い、田浦」武器手入れをしてる田浦3曹に声をかけるのは井上3曹だ「どした?」「射撃結果見せて〜な」各隊員の射撃結果は訓練で掌握、運幹や射撃のコーチ等に見せてから各隊員に返すのである
「まずは運幹に…」「その運幹に頼まれたんや」井上3曹は射撃のコーチでもある「そうか、事務所のオレの机の上に置いてあるわ」

カチャカチャ…と89式小銃を組み立てる。最後の部品を組み込んで機能点検をする「連発…3点射…単発…そして安全装置よし!と」そして武器庫に銃を格納する
武器庫から出て事務所に入る。訓練の机に座ってるのは井上3曹、横に佐々木3尉だ
「大沼3曹は…弾着がまとまって…」「じゃあ選手要員に…伸びる余地がある人を…」だいぶ先の話だが、射撃競技会に向けての人選らしい
「お、邪魔かな?」事務所に入ってきた田浦3曹を見て佐々木3尉が言う「いや、いいっすよ。選手要員が決まったらまた教えて下さい」訓練として選手名簿を掌握したい田浦3曹である
「で、井上はどうだった?」ニヤリと笑いB5判の記録用紙を見せる「…伏せ撃ちと中間姿勢で49点!満点まであと1点かよ…」やはりスナイパー要員だけある
「ま〜こんなもんや、ゴルゴと呼んでくれや」少しお調子者ではあるが…


510 名前:まいにちWACわく!その143 投稿日:04/08/02 17:43

射撃も終わり終礼を待つだけとなった。とそこへ補給の鈴木曹長が話しかけてくる「おい、田浦…明後日に作業員5名取れるか?」
「5名?多分いけますよ。でも何で?」「新型半長靴の受領と交付なんだわ」「新型?」はて、半長靴が新しくなるのか…と頭をひねる田浦3曹であった

2日後…「よし、この箱を全部リアカーに積んでくれ」「は〜い!」作業員は各小隊から1名ずつ、新兵ばかりが集まっている「コレって何ですか?」作業員で来ている赤城士長が聞く
「新しい半長靴(戦闘靴)2型さ。赤城のサイズは取るのに苦労したんだぜ」と鈴木曹長「?」新型って何?と言う顔をする新兵たちであった
補給庫に箱を並べる「さて…サイズ26はそこに並べてくれ」そういって新型半長靴を取り出す「お〜」「へ〜」「これは…」新兵たちから声が挙がる
色は全体的に黒く、普通の登山靴のようなデザイン。靴先も本体と一体化しており、くるぶしと足首から上は布のようなモノが張られている
長さも普通の半長靴より10cmは短い「これが戦闘靴2型だ…持ってみな」「…重い!」持ってみて声を上げる赤城士長「中がすげーよ!ゴアテックスか?」誰かが言う
靴の上部まで防水性の素材が張られており、水がしみこまなくなっている「つま先が固いよ」つま先には鉄板が張られている

ひとしきり新兵たちが騒いだあとに鈴木曹長が言う「もう支給されてる部隊では評判いいらしい、まぁ噂だがな。さ、仕事してくれ!」


511 名前:まいにちWACわく!その144 投稿日:04/08/02 17:44

課業外…廊下に新聞を引いて受領した戦闘靴2型を手入れする赤城士長「まずは靴墨を…」支給された黒の靴墨を革の部分に塗っていく
全体にまんべんなく塗り終わったら、ウェスを使い墨をふき取っていく。そしてブラシをかけて靴を光らせる
「あ〜早速新型手入れしてるんだ?」そばを通りかかったのは衛生小隊の橘1士だ
「今日支給されたんだよ。ユキはまだもらってないの」「まだ…」「この子『サイズがない』って言われたのよ〜」と一緒にいた衛生小隊・中森1士である
「サイズ?」「うん…22.5なんて補給処にも無いって」残念そうに言う橘1士「タダでさえ服も装具も苦労してるのにな〜」
体格のいい普通科隊員を基準に作られている装備品は、身長148cm(見込み入隊)の橘1士には大きすぎるのだ「装具だって、弾帯に弾のうとか付けるでしょ?でも全部は付けられないのよね〜」
腰回りに付ける装具には弾倉を入れる弾のうや水筒、包帯を入れる救急品袋、銃剣も含めるとけっこうな量になる
さらに状況によっては折りたたみ式のエンピも付くので、(最近特に多い)やせ形の隊員は弾帯の内側にカバーを入れてまかなっている
だが、橘1士はカバーを付けても装具全部を付けるのは無理なので苦労しているのである
「補給班長は『何とかしてやる』って言ってたんだけどね」そう言って肩をすくめる橘1士であった


512 名前:まいにちWACわく!その145 投稿日:04/08/02 17:45

同じ頃…中隊の幹部室。各小隊の小隊長・小隊陸曹に係陸曹が集まっている「では、6月の勤務調整を始めます。まずは6月の予定から…」前に立つのは岬2尉だ
「6月始めに5日間の師団規模演習場整備、直後に情報・施設作業・管理整備小隊と3中隊の検閲があります」全員が配られた書類に目を落とす
「予定してました中隊錬成野営は…演習場が取れなかったので中止。ただし、極楽山訓練場で1夜2日の錬成訓練を実施します」ほぅ…と誰かが息を漏らす
「そして月末に連隊持続走競技会、距離は5km、コースは駐屯地内、参加範囲は基本的に全隊員。以上、大まかな6月の動きです」そう言って岬2尉は腰を下ろす

次に先任「6月の特別勤務等は事前に示したとおり、不都合等あればまた個別に調整します。それから…」ゴホンと咳払いする「6月前半の2週間、糧食班に1名の差し出しが来ています」
「それは何でですか?」質問するのは木島曹長だ「本管の検閲での交代要員だ。田浦、誰にするか決まってるのか?」書類から顔を上げる田浦3曹「三島を予定してます」
「む〜三島か…候補生も受かりそうだから小隊に返して欲しいんだがな」渋い顔をするのは近藤曹長だ「業務隊から『即戦力が欲しい!』と要望が…」困った顔をする田浦3曹
「泣く子と業務隊には勝てんよ、それに合格者発表もまだだしな。7月までは貸してもらうぞ」先任の言葉に笑いが起きる
「ま〜だ合格者わからんのですか?」と聞くのは神野1曹「人事班の口が堅くてね…」肩をすくめる倉田曹長であった


513 名前:まいにちWACわく!その146 投稿日:04/08/02 17:46

「演習場整備の参加者は基本的に中隊主力です。検閲支援は…」書類をめくる田浦3曹「補助官に各小隊長とドライバー、仮設敵に神野1曹以下3名、以上です」
「帰れないんだね…10日くらい連続で演習か〜」悲鳴を上げるのは佐々木3尉だ
「検閲支援に参加する人は頑張って下さい。代休も計画的に」とあっさり言う田浦3曹。そうそう簡単に代休が取れる状況でも無いのだが…
「あと急な話で何ですが、月末に方面の音楽祭支援があります」ざわざわとざわめく中隊一同「具体的な人員等は後日、1科から示されますので、心の準備をお願いしますね」
「見積等はあるんだろ?」そう質問するのは近藤曹長だ「そうですねぇ…中隊で15名くらいになりそうです」
「それくらいなら…」「主力じゃないのか…」安心したような声が漏れる
「支援に参加したら持続走大会は参加無し?」誰かが言う「いやいや、支援は土日で次の週の水曜日が大会です。もちろん参加っす!」力強く答える田浦3曹であった


514 名前:まいにちWACわく!その147 投稿日:04/08/02 17:49

「次、係陸曹から何かありますか?」岬2尉が言う「まず訓練!」
「先ほど田浦が言ったとおりです。持続走大会はドクターストップがかかってる隊員以外は絶対参加なので、体力錬成をしっかりと頼みますよ!」と訓練Aの中島1曹
「補給!」鈴木曹長が立ち上がる「新型戦闘靴を逐次行進してますが、一部隊員に旧戦闘靴の返納状況が悪い者がいます」後を継いで林2曹が言う
「戦闘靴の返納は墨を使わず靴を磨く、靴の底も水洗いして泥を落とす。各隊員にさらなる徹底をお願いします」
「次は…武器!」「え〜89式の銃床や握把部分、ここに油を付けてる人が散見されます。プラスチックが劣化するので油は極力付けないように!」と高木2曹
「まぁ顔の脂はしゃ〜ないですな」クスクスと笑いがおこる
「給養!」「前から言われてるのですが、営内者の喫食状況がよくありません。できるだけ駐屯地内で食事をするようにしてください」川井2曹は渋い顔だ
「もったいねぇよな〜タダメシならオレが食ってやるのに…」とぼやくのはローンに苦しむ鈴木曹長だ
「人事!」「保険の配当金が来月支払われます。時期については…」と倉田曹長が言う「当日不在の隊員については、代理人が受領して下さい」
「通信!」「7月の検閲でバトラーを使用します。全員にはわたりませんので各小隊は誰にバトラーを装着するか検討しておいて下さい」と岡野2曹
バトラー(交戦訓練装置)とは銃にレーザー発射機、各隊員に受信機を装着してより実戦的な訓練ができるように作られた装置である
「割当数は各小隊5〜10セットくらい、各小隊長と小隊陸曹は必ず付けるようになってます」
「え〜と、次は…先任?」先任が手を挙げている「もうすぐ陸教に行ってる木村1曹と藤井士長が月末に帰ってくるよ。二人とも優秀な成績らしいぞ」
木村1曹は上曹、藤井士長は初級陸曹課程からもうすぐ帰ってくる


「あと何かありますか?」岬2尉が言う。課業外な事もあり全員早く帰りたい、というわけで誰も何もないようだ「では中隊長…」

中隊長が立ち上がる「訓練最盛期となり非常に忙しくなってきている。隊員には逐次代休を取らせるのでそのつもりでな」全員の顔を見渡す
「7月には中隊検閲があるからな。各班長から小隊長まで隊員たちを盛り上げていくように!以上」


515 名前:まいにちWACわく!その148 投稿日:04/08/02 17:50

会議も終わり事務所に戻る面々「いや〜6月も忙しそうだね」と先任「訓練サイドで『訓練管理』があるんですよ…」と田浦3曹だ
「いつ?」「6月末、1/四半期末ですね」各期ごとに各中隊の訓練成果を3科がチェックして、次の期の訓練内容等を指導するのが「訓練管理(指導)」だ
補給関係は「現況調査」等でチェックされ、訓練関係は「訓練費」や「訓練管理」でチェックされる。なかなか気の抜けない中隊本部である

そう言いつつ机に座り仕事を始める田浦3曹、他の面々もなんだかんだで残業のようだ「なかなか楽にならんよ」と先任がつぶやく
先任も師団司令部から回ってきた「師団服務規律強化期間」の所見を書いている
「隊員の服務規律強化」のため年間何度か設定されるこの期間中は「敬礼・答礼・挨拶の確行」や「服務規律強化施策の実行」などが行われる
「て言うか幹部が率先して服務規律違反してるのに、現場部隊に何を守れと言うのかねぇ…」いつも同じ事をつぶやいてるような気がする先任であった
「最近そういう事があったんですか?」つぶやきを聞いた田浦3曹が聞く「知らないのか?GW前に師団司令部でセクハラだよ」と先任「セクハラ?」
ふ〜とため息をつく先任「あぁ、ま〜露骨にケツを触ったとかじゃないんだけどな」

「普通科部隊から転属してきた幹部が、庶務班の陸士WACに『お茶くみは女の仕事だ』みたいな事を言っちゃったんだよ」「それはあんまり良くないですね…」
「ま〜でもそのWACも大人げないよ。いきなり師団を飛び越して方面総監部に直訴したんだ」


516 名前:まいにちWACわく!その149 投稿日:04/08/02 17:51

同じ師団司令部内での告発なら、話を大事にせず内々の処理も可能だっただろう。それを方面総監部に持っていくとは…
「ま、内輪で話をもみ消されるのがイヤだったのかもな」「その幹部はどうなったんですか?」「『戒告』だったかな?」
懲戒処分の中でも「戒告」は一番軽い処分だ。が、懲戒処分は一生その人の経歴に残る。しばらくの間は昇任も昇給もなく、事後の出世も危うくなる
「その幹部はずっと普通科で勤務して、中隊長として勤務してた時は3級賞状まで受けていたんだ」「そりゃスゴイ!なかなかいませんね〜」
連隊長を飛ばして師団長や方面総監から直々に表彰されるというのは、普通科中隊では滅多にない事である。つまりはその中隊長がどれだけ優秀であったかを物語っている
「部下にも慕われ上官からは信頼されていた野戦指揮官も、司令部でのたった一言で未来がパーって事だ。恐ろしい話さ」「…」
防衛庁はセクハラに関して、ほとんどの場合「言った者勝ち」のような処分を下している。過敏すぎる反応と現場でも言われているのだが…
「ま〜最初は心配してたんだよ。赤城が来る時はな」「そうでしょうね、でもいい子で良かったじゃないですか〜」気楽に言う田浦3曹
「ま、お前らもよくやってくれてるよ。まだ心配の種は尽きないんだが…」とため息をつく先任

(しかし普通科中隊最初のWACにああいう子を選ぶってのは…陸幕や方面総監部の連中もバカじゃないんだろうな)密かに思う先任であった


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