番外編:田中士長の戦い 解説

陸士と陸曹の違い…一番わかりやすく言うと「バイト」と「正社員」ですね
任期制隊員の陸士は2年ごとに「任期継続」か「退職」かを選択するわけですが、最近の傾向として「3任期(6年)満期までに退職or陸曹昇任」というのが主流です

自衛隊に残りたい陸士は、3任期満了(実際は就職活動などもあるのでもう少し早めに)までに何らかの手段で陸曹に昇任しないといけないわけですが…
「准看護士」や「技術陸曹」大卒陸士なら「一般幹部候補生」高卒で若い隊員なら「防衛大学校」などいろいろ自衛隊に残る道はあります。が…
やはり部内選抜の「陸曹候補生」が普通科連隊では一般的です

師団や方面によって細部に違いはあるかも知れませんが…
試験は年2回、陸士長に昇任して1年以上経過した陸士が受験資格を持ちます。任期制隊員なら2任期目に入って1年弱で受験資格が得らます
受験資格を得て最初の試験で合格した隊員は「1選抜」と呼ばれ一目置かれます。だいたいは「2〜5選抜」が普通でしょうか
1次試験は筆記、2次試験は分隊教練・面接(口述)・体力検定、部隊によっては1〜2種目ほど増えるところもあるようです

筆記試験は国数英理社の5教科(中卒程度)服務小六法関係(自衛隊法や服務規則、礼式など)教範関係(銃の特性や戦闘訓練、地図判読など)など
当然ながら筆記試験の成績が上位であるほど有利です

1次試験が終わり、だいたい1週間〜1ヶ月ぐらいしてから結果が発表されます。1次試験に合格した隊員は話の中にもあったように、勤務や演習から外され2次試験に向けての合宿に入る事が多いです

分隊教練は約10m四方の枠を作り、9〜10名ほどの分隊を指示・号令だけで動かすというものです
枠内でのコースはいくつかのパターンがあり、時間制限もあるなど練習していないとかなり難しいのです

口述試験は普通の面接、面接官は連隊本部の幕僚…という事が多く「連隊長伝令」や「副連隊長付ドライバー」などの連隊本部臨時勤務を経験していると、口述は有利になります
中隊側もその辺は心得ており、こういった勤務に差し出されるのはほとんどが陸曹志願の陸士です

体力検定は近年特に重視されており、本来の合格基準をクリアする程度では合格は難しくなってきています
新しい基準の「新体力検定」も近いうちに本採用されるそうで、ますます体力検定は厳しくなっていくものと思います

合格発表は試験から1〜数ヶ月後、そして1月1日または7月1日に「陸曹候補生に指定」されます
それから陸曹教育隊に入校するまでの半年間は「候補生だから」とかなりこき使われます
この半年間に何か不祥事を起こすと指定が取り消され、ほとぼりが冷めるまで陸曹候補生の指定は来なくなります
そして履修前教育を経て陸曹教育隊に入校、半年間の訓練を経て翌年の1月1日か7月1日に3等陸曹へ昇任…ということになります
入校・昇任した期も重要で、同じ3曹でも期が上の者が先任者となります。ちなみに平成17年7月に入校した陸曹候補生は「107期」です

不況のおかげか自衛隊が認知されてきた社会情勢のおかげか、近年の陸曹候補生試験はかなりの競争率になっています
以前なら受かっていたような隊員でも最近は落ちることが多く、そう言った事例を見るたびに「勿体ないな〜」と実感します…


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