「おら〜いけ〜!」「つけ つけよ!!」今日は陸教の銃剣道大会だった
気が付けば陸教後期も終りが近い
最終訓練や総合試験も終りあとは、銃剣道大会と、同期会主催の一泊旅行 教育終了式だけと大きなイベントは残す事になった
「ミシマッチー!勝てよ!」三島の呼びなはいつからか、三島候補生からミシマッチと変わっていた
これはもちろん、助教の逆天使 大川の影響が大きかった
訓練中も三島が楽をするため手を抜こうとすると「俺はミシマッチの指導でもするかな」なんて常に可愛がられる?存在だった
まぁ三島の性格は逆天使を天使とさせる魔力もあったのか?「いゃ〜 大川助教に教えて貰える俺は幸せもんだぁ 」とか大川個人に「いゃー 妹さん 可愛いすよね〜 なんなら、俺、ずっと友達のまんまでいますよ〜 」など調子のいい事ばかりを言う始末。
妹の話で始めは、怒るそぶりを見せていた大川もあとから「妹ネタは俺の肩揉み一分の罰」とか愛嬌を見せ始めたから、もう三島のペースに持っていかれた。
仕事以外はなんでもこい の三島にとって肩揉みなど楽以外なんでも無く、肩揉みしながら、「大川助教 こんど飲みに連れていってください 妹さんもいれて」と回りが青ざめる発言をバシバシ言い放つ。
そんな発言に、大川は「ミシマッチの毒蛾に俺の可愛い妹やれるわけねーだろ」と笑いながら答えたもんだからいつからか皆からミシマッチと別な尊敬の眼差しで見られたのだ
そんな調子で三ヶ月は終ろうとしていた
「やー」 審判から赤の旗が上がる
「よくやった ミシマッチ!」
戦技を得意としない三島が班対抗戦 勝ち抜き戦で二勝目を飾った瞬間だった
「スゲーよ ミシマッチ」回りからは誉められる 「いゃー銃剣道初段はだてじゃないね〜」と三島 「んなもんみんなもっとるわい」とつっこみを入れる一同
先鋒の三島が2連勝と幸先が良く、勢いにのる
三回戦目 相手は学長の橋本だった
「やー えい やっやっやー」…… 普段から銃剣道を日課とする橋本はさすがにてごわかったが、中々の試合をしたもんである
この銃剣道大会は異様とも言えるテンションで盛り上がり、その歓声が誰も居なくなった夜の体育館にまだ残っているかのような、興奮を隊員一人一人に与え幕をとじた
銃剣道大会が終った次の日の夜……
「え〜 旅行先は、箱根の温泉 〜〜」
今日は、課業外を使って学生会旅行の説明である
「大宴会では、コンパニオンは呼びません。そのかわり、各班づつ出し物をして、順位をきめたいと思います しかも、看板まで準備してますので、看板取れなかった班は最後の勝負と思って真剣に出し物してください」と学生会長の益田候補生が【お笑い・演芸優秀班】と書いた看板を出しながら説明をする
回りからは「おぉ あれが伝説の…」とかワハハと笑いであったりとか 「絶対取る」と気合いの声が聞こえてくる
気合いの入る班には、一人要注意人物がいた
そう 三島である
本人は、そんな看板取れるほどのネタなんかないし そもそも、競争意識が少ないから〜
なんて皆に言うが、教育の雰因気を間違えなく変えた三島はお笑い部門では間違い無くトップになるであろう存在だった
「えーでは、今週土曜日26日 から日曜 27日旅先で絶対事故おこすこと無いよう、思い出に残る良い旅行しましょう」学生会長の説明も終り各部屋に皆帰る
土曜の朝
「はぁ〜 何してんだろうなぁ」
全てが終るとはいえ、朝の駆け足は相変わらず日課である
旅行当日にも関わらず走る 走る 走る
そりゃ溜め息も出てくる
しかし、成績も決まったと思っていい教育最終間近
当然さぼる者も出てくる
「違うって! そう そうだよ!」ここ、益田率いる班は、最後の看板を賭けて、朝から 寸劇 の練習をしていた
当然、皆には内緒である
それだけ気合いの入った話である
一方……優勝候補ともくされる三島の班は ……
「フワァ〜」眠そうな顔で走る三島 文句を言う気力も無いくらいに眠いらしい 同じ班の市川は、「ミシマッチ〜 どうするよ?」と走りながら話をはじめた
三島「何がぁ ?」市川「今日の余興さ」三島「はぁ。 ふわぁ〜」大きなあくびをしながら走る
市川「みんな、ミシマッチに期待してるんだよね」三島「へ〜い」ダルそうである。市川「… 期待していいのか?なんなら今から練習するか?」
三島「ん〜 練習も何も…な〜んも考えてないよ」市川「……」三島「ま〜 気楽に考えましょうや バスの中とか温泉入りながらさ」
市川・他の班員「……」
九時
観光バスが到着した
「よーし 点呼取って異常なければ、乗車!」
観光バスに乗るのにも、点呼って…自衛隊である… 何か物悲しい…
まぁしかし、駐屯地すれば出れば バスの中から宴会 と言う事をしってる候補生達にしてみれば、なんでもいい話である
バスは駐屯地を出て一路箱根へ 途中でビール工場 日本酒蔵本と酒づくしの観光をしながら行く旅である
「カンパーイ」ぷしゅ バスが駐屯地を出るとそこはすでに走る居酒屋だった
貯めにためたストレスを酒で発散させる候補生達 学生会会計係りと厚生係りが必死に「ビールは当初一人2本なー!」と叫ぶも、「ビールまだある〜? 焼酎はあんのか?」 とわがまま言い放題である
飲めない三島に朝と同じく市川が相談に来た
「ミシマッチ そろそろ案を!」
三島「しかたないなぁよし じゃあネタを発表しよう!」市川「おぉ」三島も寝起きじゃなければ会話も順調である
市川「おーい うちの班員 全員ミシマッチの回りに集合!」
三島は全員が集まったのを確認し・・・
「うちらがやるのはこれだ!」と紙を見せた
紙には、でかく、【ネタばれしないように、絶対喋るな!】内容は【三島と大川兄妹の愉快な仲間達(寸劇)】と書いてある
班員一同 顔が青ざめたのは言うまでもなかった
蔵本 ビール工場 追加された缶ビール
箱根のホテルに着いた頃には候補生達は、顔を真っ赤にする者 青い顔でグロッキーになる者 酔い潰れて寝るもの
さまざまな顔があるなか、この班員達は違っていた
関心は一つ まじで大川ネタか?
これだった
そんな班員をよそに三島は部屋につくなり 「よし!練習するよ!」と気合い充分だった
ある程度の要領をつかんだ事を確認し、風呂に入り……
宴会は始まった
「ゴクローサン 乾杯」区隊長の乾杯を始めに、宴会は始まった
しばらくすると、ツアーを組んだ旅行会社からのプレゼントです と言うアナウンスが流れた
部屋の電気が消され、部屋にあったステージのみの電気 すると…怪しげな音楽と共に、外人ストリッパーの登場だった
酔っぱらった候補生達は興奮が頂点に達した 橋本は皆を喜ばせようとしたのか?自分でしたかったのか?謎だが、踊るストリッパーの横に行き、自らも全裸になり、一緒に踊っていたら、ストリッパーのマネージャーらしき人達に止められ 一人ショボーンとして自分の席についた
興奮のショーも終り、いよいよ余興の時間となった
橋本 山川がいる一班
お題
ウォーターボーイズ(陸上版)
皆、パンツ一丁になり怪しい仮面や正当な水中眼鏡をかける。ステージ前には青のスズランテープでプールを想定している
見事に踊りきっている他の班員達は強力な敵だ!と気合いを入れなおした とあとから語ったと言う
続いて二班 2班と言えば、合コンを企画した、木村がいる班である
この2班には、一番強烈なキャラがいた
銃携行の訓練時にそのまま、一人訓練場に行ってしまって皆を武器庫前で待ち惚けさせて伝説となった林山候補生 その他にも、数々の伝説をこの三ヶ月で残した強烈キャラだった
2班では、この林山を題材に題名【林山伝説】とし、某芸人の歌をぱくり、伝説の男〜♪今日は伝説の男 林山の伝説をおしえよ〜♪と歌を歌ったあと、伝説の場面を寸劇で行うとと言う劇をした
皆、身近にいる林山の事だけあって、異様なもりあがりを見せた
三班 益田率いる班だった
ここは、自衛隊お得意の下ネタ芸に走っていた
ウォッシュレット
口からもう一人の肛○向けて水を飛ばす
会場を暗くし、お得意の蛍
まぁ…… 看板を狙ってると自信満々に語っていたが1〜2班に遅れを取ったのは、誰の目から見てもあきらかだった
最後の班である
誰もが注目した三島率いる4班である
現在まで看板獲得0枚決して優秀と呼べないこの班に、最後の看板は、今、ウクレレを右手に「じゃ 練習通りにいくよ〜」と決して気合いの入った声と言えない程度で指示を出す三島の手腕にかかっていた
「続いて4班」アナウンスが流れる
お題 「……」司会も、さすがに絶句する
何も喋れず、紙をめくる。
お題を見た候補生は「おぉー」と異様な盛り上がりとなった
その時 ウクレレを引きながら三島が登場すると…候補生は声を合わせ「ミシマッチ〜!」と声援を送ったほどだった
三島はウクレレを引きながら「皆が 合コンの実情をしりたがってる♪ いやになっちゃうな さぁ〜 たのしめよ♪」と歌を歌うといつのまにやら手拍子がはじった
さて、この内容はと言うと…
過去 合コンの風景から始まり 大川にいじめられる三島 三島の心の中
天使 悪魔の三島 悪魔、妹やっちゃえよ 天使 やっちゃうと大川兄さんだよ
さらに、大川をステージに引きずりこんで、自ら、大川の罰をうける三島
そして 三島の妄想未来 僕と大川妹と大川兄と…
即興にしては、よく笑いのツボを押さえており、誰もがそのステージに張り付けとなり、1〜3班にはなかった盛り上がりを見せていた
最後に、「大川助教 これで許してください!」と言い 班全員で大川が好きだった、罰 空気椅子を2分しながら、三島の物真似ネタを披露したもんだから、大川も笑いでしか済まさなくなっていた 候補生達の興奮は最高潮に達していた
さて、表彰式である
区隊長の吉村曹長が、ステージの上に立つ
さらにその横には看板を持った飯野助教がいる
「それでは、第一位の発表をする がその前に… 今日、君たちがした、余興と言うのは、自衛隊において必要な物と私は考えている。
自衛官は戦う事を目的として作られた職業であるが、戦地において、何の笑いもなく、過ごすのは、危険を顧みず任務遂行する上で酷である。
その理由はこんな席で言ってよいかどうかわからないが、あえて正直に言おう。君達は戦場に一歩立つと生きるか死ぬかの、選択をすることも無くただひたすら、国防と言う信念を持ち敵と戦わなければならない。
その中にいて、笑い顔も全く知らないまま、また、緊張したまま戦死と言うのは、あまりに、寂しい。 しかし、笑いたくとも戦地に娯楽などあるはずもない。
そこで活躍するのがこの芸なのだ。もしもの時、部隊が緊張して普段の動きが出来なくなった時、今日のような芸で、皆を笑わせ、戦場にて大活躍出来る事を私は君達に望んでいる!
では、発表する」
皆、唾を飲みこみ行方を見守る
採点方式で決められたこの看板 一コ班・助教一人に・区隊長と各10点の持点
班で40 助教40 区隊長10 計90 点である
吉村「一位 、点数85点 …… 第一班 ウォータボーイズ」
この瞬間 一班の皆が 「うおぉー!」と叫びだす
他の隊員達は拍手したり溜め息ついたりとさまざまだ
さらに吉村は 「続いて 同じく85点 第一位 第四班!」
宴会場にはさらに「うぉー」と言う歓声が上がった
三位 2班 四位 3班
「おい 看板どーなるんだ?」にわかにこんな話をする隊員が出始めた。皆賛同するかのよーに ガヤガヤと騒ぎ出す
すると吉村は「看板はじゃんけんだ!文句無しの一回勝負 一位の班はこれで文句無いな?」
すると一班橋本が「良し!俺が行く!」と早くも勝つ気満々で名乗りを挙げてきた
対抗して四班も「よし、そっちが強きでくるなら!うちも、ミシマッチで行く」と気合いを入れて三島以外の市川や他の班員が口を揃えて発言した
三島 「えぇー!俺?」と言う三島に班員は「みしまっち〜 負けんなよ〜」とすっかり盛り上がっている
対峙する三島 橋本
銃剣道では勝利は橋本の手にわたったがジャンケンでは…
世紀の一戦とまでは大袈裟すぎるが、少なくとも、宴会場にいた、46名は緊張していた。
「最初はぐー じゃんけん……ぽん」
その瞬間 会場には割れんばかりの歓声と拍手が流れた
橋本 グー 三島 パー
ついに四班に看板が一枚来た瞬間だった
陸教後期 最終日…
式 最中
次々と呼ばれる候補生の名前
教育隊長賞「橋本候補生」
中隊長賞「……
小隊長賞「…
努力賞「三島候補生
式終了……
たった半年から三ヶ月長く 短い陸教生活を終え皆続々と、原隊へと帰って行く
「年賀状たのむぞ〜」「同期会絶対やろーな」
「気を付けて〜」
こうして、自衛官を一生の仕事と選ぶ決心をした若者達は、各地において活躍するのであった
三島サイドストーリィ
〜陸教(それぞれの旅立ち)編〜 完