宴会
クジラ山を奪取した一区隊面々
実はクジラ山のとなりの杉沢平が宿営地であった
宿営地まで徒歩で進み、昼飯
と思っていた新隊員達に思わぬプレゼントがあった
焼き肉…
ようは、打ち上げ宴会の場がセットされていたのだ。
すぐに焼き肉か?
こんな期待をよそに藤田3尉は「宴会は夜からだぞー!まずは昼飯、その後銃手入れ。銃手入れは野外だから確実に班長の言う事きいてやるようにな。15時からカルーク駆け足
で16時30分より、風呂に行くぞ
宴会は18時開始」と説明
しかし、楽しみにしている若者には、そんな半日は一瞬で
宴会が始まった
「乾ぱーい!」
焼き肉の匂いと煙が立ち込める演習場
最後の打ち上げ宴会「あっ その肉、俺が育てた奴だからとんなよ!」とか
「まだ肉あるからガンガン焼くべぇ」とか
「ビール2本目、んー、ポンシュ行く?その前に、普通に飯も食いてえ」
とか、所々から聞こえてくる
18、19の新隊員
流石に…食べる…飲む
2班も同じで
「おら、三島もっと飲めよう。」と仲間が言えば
「酒と言えばさぁカクテルがいいんだよね」と講釈云々と熊田
三島は、進められる酒をチョビチョビと飲んでいた
仲間が「三島〜もっとガァって飲め〜」とすでに酔っ払い状況で絡むと三島は
「俺、ビールの味好きじゃないんだよな。高校の時もあんまりビール飲まないで、焼酎をコーラで割った奴とか飲んでたよ」と冷静
それを聞いた熊田が「なんだよ〜三島は意外にお子ちゃまだなぁ。わかった、俺が上手い焼酎作るから今日はガンガン飲もうぜ」と自信満々だった。
ペットボトルに入った焼酎に入浴時に購入して来たコーラやらスプライトやらで割って飲む三島
「これなら、うまいから飲めるよ」
最初は冷静だった…
「おい!お前らの中で余興やれる奴いないか?」
新隊員に混じり、顔を赤くしている藤田が叫ぶ
その時、三島は班付きの佐藤とゲームの話を熱く語っていた
佐藤が「おぉ 三島〜 お前、前出て一発、周りを笑わせてこいよ〜!」
と言うと
周りも恥ずかしがって誰も出たく無いもんだから
「オォ、三島頼むぞー!」と一斉に声が上がった
宴会場の中心には、まだ誰も出ていなく藤田が
「お前ら〜 どうせ中隊行くと、やらされるんだぞ〜
早く出てこいよ〜」
とすっかり酔っ払いオヤジである
三島は、意を決して「じゃあ ウケないかもしれませんが
行くっす!」と言い焼酎を一気に飲み干した
中央に歩く三島に、酔っ払いからの声援が飛ぶ
「えー それでは、私、三島2士が皆さんを笑わせます」
と始まった余興…
しかし…
結果は全くウケなかった…
余興で緊張と落胆…
さらに飲みなれない酒を大量飲酒で三島は、余興が終わると同時に、吐き気を感じていた
「ヤバッ!」
宿営地から少し離れ、三島は戻す
目の前がクラクラする
星が飛ぶ
これは…ヤバいと本人も覚悟したほどだった
それに気づいた山本は三島を天幕に戻し寝せるが…
三島は寝る事ができず苦しむだけだった…
余興の失敗と酒への恐怖…
「もう飲まねえ…けど笑わしてやる…」と言いながら、うなされていた…
こうして、初めての野営は終了していった。
終了…
長かったようで、振り返ると短い
辛かったけど、思い出すと楽しかった事も沢山ある…
そんなそんな色の濃い3ヶ月…
新隊員前期課程の終了である。終了式を終え区隊で集合する
藤田を始め、各班長や班付きの激励等の一言…
感極まってか、涙をそっと流す新隊員もいる
その後、区隊での集合は解散となり営内班へと戻る一向
明日の移動へ向け、黙々と官物・私物をまとめあげる
そんな作業中…
「みんな、有難うな…次、いつ会えるかわかんないけどさ…お互い元気でいような…」熊田の一言だった…
「ん〜。だよな、次会う日だよ。またみんなで会おうぜ、そうだ、来年の正月!この時使って宴会!班で宴会しようぜ」班員の暗い雰囲気を吹き飛ばす、佐々木の一言である
そこから、彼らは息を吹き返したかのように、思い出話に華を咲かせた。静寂な廊下には彼らの声が響きわたる
高橋「どうせなら次の集合まで三島が童貞か賭けようぜ!」三島「おう!じゃ俺は童貞じゃない方にかける」
仲間、林、高橋、佐々木、森田、森、熊田「童貞に賭ける!」
三島「………」
こんな、馬鹿な話が多かった。
丁度廊下を歩いていた藤田は「またこの班から…こんな昼から馬鹿騒ぎして!」と思ったが、自衛官として、一歩前進した彼らに、もう腕立てをさせる事は無かった。
そんな彼らは、明日、それぞれの任地へと…
旅立つ…
合い言葉
【頑張ってこ】
この一言を頭にたたき込めて…
三島新隊員編
完
番外編 宴会
佐々木が冷静に語りだす
「んじゃ俺が音頭とって…」
「えー あけましておめでとう と…皆さん一士昇任おめでとう
と…再開出来た事に… カンパーイ!」
旧1区隊二班の宴会である。
約束通り、年明けに実施された宴会
その時すでに、酒を飲む三島の姿は無かった
久しぶりにあった熊田
「三島〜酒は?なんで飲まねーの?」と聞くと、三島は
「駄目だ、俺に酒は合わない。後期でも中隊入っても、宴会して飲むと地獄みるんだよ」
と
熊田は「まぁ、うちの部隊にもそんな人いるよ。けど、飲め無いのに宴会って申し訳ないなぁ」
三島「別に問題ないよ。それに久しぶりだから、すげえ楽しいし。中隊入って残留残留でな」
と話を森が割り込む
「施設も同じ、残留天国だよ。ましてや俺なんてよぉ、先輩に誘われて駐屯地の太鼓部に入ったから他の同期より残留多いんだ」
三島・熊田「太鼓?」
森「そう。ほら、自衛隊の中央音楽祭りなんかでやってるだろ。あれよ、あの太鼓。残留多い以外はなかなかいいよぉ。師団の行事とかに呼ばれると、師団で働くワックと仲良くなれたりとかさぁ」
うんウン頷いて聞く二人
三島「行事かぁ…ん〜そんなんでワックと知り合うて話もいいなぁ」
森「そう言えば結局三島はワックと仕事してるの?」
三島「…藤田3尉にすっかり騙された…ワックなんて一人もいないナンバーに配属になったし…」ふてくされ気味な三島に熊田が
「あぁ!思い出した!じゃあまだ三島は童貞か?」
と言うとワイワイと話ていた他のメンバーも
「そうだ!思い出した」とばかり三島に注目する
「三島、童貞じゃないよ。今も彼女いるよ」
こう証言したのは高橋だった。
なんでも高橋の紹介だったらしい。
三島は、ここでの宴会で知識を得た。夢のワックの彼女…
なんかの支援てのも一つの手かぁ…
こうして、純粋だった三島2士は、階級が上がる事に純粋さを無くし…
自ら、濃いキャラクターへと変身していくのであった。
完