三島番外編04 新隊員編 その2

職種

今日は朝から異様な空気が張りつめていた
テレビ画面の中ではあるが…
フラフラになりながら重装備で歩く隊員、食料が無く、ミミズを食べる隊員…
そう、今日は1日、職種についての教育と言う事で、一発目に空挺のビデオを見ていたのだ。
降下課程の映像の時は興味を示す新隊員もいたが
空挺レンジャーの教育風景に変わると、次第に場は静まり返って行った…

その後、各職種の教育を藤田3尉より受ける
普通科は、陸上自衛隊のメイン部隊で…特科は簡単に言うと大砲で
施設は要すれば土方で
武器は町の整備工場で…
どうも、普通科以外はあまりPRする言い方は無いようだが、新隊員にはそんな事はわからずだった。
そんな日の課業外
「やっぱり輸送に行ってすぐ大型の免許欲しいな」と、佐々木が言えば
「警務ってかっこいいイメージあるよ。俺でも行けるのかな?」と仲間
さらに「俺は、水虫にならなければ…」と、医務室でもらった塗り薬を足に塗りながら高橋が言う
「俺は、ワックと知り合って楽しく仕事したい!」こう話すのは熊田である
特に興味を引かれる職種が無かった三島が、唯一反応した言葉である
ワックと仕事…
それ、いいかも…
と、なると…
「なんの職種だとワックと一緒に仕事出来るのよ?」
身を乗り出し、熊田に確認する三島だった。


新隊員後期への道〜現実〜

入隊当初から少し、雰囲気は違っていた熊田
自衛隊慣れしているわけでは無いが…回りが知らない知識を知っている事が多いのだ。
そんな熊田が珍しく力説する
「やっぱり、ワックと仕事するって言ったら、会計とか通信、戦闘職種なら特科だよ!ワックも多いとなんとなく楽ってイメージもあるから、選ぶならそのあたりだよ!」
皆、ウンウン頷いて聞いている
さらに
「武器なんかもワックはいるみたいだけど、全体が職人みたいな人達ばかりで、結構ストレスたまるみたいだよ」
と続ける
どこから来た情報かはわからないが、妙な説得力があり、皆、ウンウン頷く
〔特科かぁ…確かに、でかい大砲をぶっ放せば、気持ち良さそうだ…しかもワックがいるってのもいいし…第一希望は特科にしてみるか〕
と三島は考え始めていた。
それから数日後
藤田3尉との面接があった。
藤田「希望用紙に特科と書いたようだがなぁ」
三島「はい。なんとなくですが、大砲を射撃する姿がかっこいいので」
藤田「そうか。そういうイメージを持つてるのか。それは良い事だぞ。ただな…」
藤田は一度言葉をとめる。
「特科に行くって事は、北海道に渡る事になるんだよ」
三島「…北海道ですか?」
藤田「特科の枠がな北海道から1名分しかないんだ。しかもつけ加えると、2区隊にいる近藤2士が彼女が北海道の大学いるとかで、北海道を熱望しててな。彼に決めようて話が強いんだ。」
沈黙する三島に藤田は
「どうだ?大きさこそ違うが、連隊にある迫か重迫で後期受けないか?今の連隊なら大型もすぐ行けるし最高だぞ」
いきなり浮上した迫の話に困惑しながら、三島は…
「次まで考えておきます」
と言って退室したのであった


「で?三島はなんて言ったの?」仲間と職種の話をしていての1コマである
土曜日、せっかくの外出日であるが、6月の雨はあまりに外出意欲をけづりとる。
娯楽室にて、仲間、三島、佐々木の三人は、私服姿で桃鉄をしていた。
三島「いやさ、さすがにワックと楽しく仕事したいなんて言えなくてさ…」
仲間「そりゃ言えないよな」
三島「…実際悩むんだよな。なんか大砲の事考えてたら、実際にあれをぶっ放してみたくなってきたし、免許もすぐって言うし」
と、佐々木が口を割り
「ところでさ、腹へんねぇか?」
時間は昼、13時だった
雨もいつしか降りやんでいる
「外出して飯でも食い行くか!」と、張り切る三人
警衛所まで歩いて行くと、正門にワックが立っていた
隊列を組み歩く三人
身分証、外出証の点検を終え外出を始めた
すると仲間が
「今のワック…重迫中隊の名札だったな」
三島「俺も気づいた!てかさぁ普通科でもワックているんだな。なんか、迫とかで後期やっても希望持てるかも!」
佐々木「おっ!?三島は早くも職種決定か?」
三島「う〜ん やっぱりワックと仕事したいし免許も早く欲しいな。そう考えれば…」
こんな不純な同期から、三島は連隊に残る決意を固めていくのであった


職種決定

「三島…お前、職種の希望する事になんか、隠してないか」藤田は、三島を目の前にはっきりと発言した
「……実は…」
悩み抜いた挙げ句、一生を決めるかもしれない、返事
三島は思い切って藤田に話た。
2回目の面接である。ここで職種と任地先はほとんどの者が決まるだろう
「実は、婦人自衛官と仕事をしてみたいんです!女の人でも、自衛官と言う辛い仕事を頑張る姿を見て、自分自身も…」「奮い立っちたいんです…」
藤田の前ではっきりと言い切った。
昼には、前期最後の体力検定もあり、すでに筋肉痛襲われている身体で…
本音は、普通科は勘弁してくれ〜!だったろう。
駆け足、行軍…もういらないと思ったからこその…
熊田が【ワックがいる部隊は体力的に楽と思う】と発言があったからだろう
その気持ちを、ぶち壊すかのように
ある意味希望を見出すように藤田は言った
「そうか。そういう事か。お前は、その理由で職種をえらんで、戦争行って、死ぬ覚悟があるのか?」
三島はドキッとした
最初に言われた言葉…
後悔しない生き方…
やっぱり彼女が欲しい。ワックと仲良く仕事してみたい!
「はい!それが自分の後悔無い生き方だと今は思います!」自信満々に、ハキハキと発言する三島
藤田は一呼吸おき
「よし わかった!お前は、うちの連隊の迫だ!あとは俺にまかせろ!大型も俺にまかせろ!」
と言う
三島は意外すぎな答えにボーゼンとしたが
藤田は続いて
「今、連隊には、本管中隊と、重迫中隊にワックはいるんだが、今年の後期で、迫にワックを入れ、ナンバー中隊にワックを入れる計画がある。だから、後期からは、ワックの頑張る姿を見て、奮闘しろ!これで決まり!意見は無いな!?」
こう強制されると当然何も言えない三島2士…
こうして、三島の未来は決まったのであった


終わりが近づく
各人の後期の教育場所が決まった
三島、高橋は連隊に決定
仲間、森は施設
ただ仲間は、施設大隊で教育を受けたのち、連隊の本管中隊にある施設作業小隊への配属
熊田は宣言通り、ワックも多いと思われる、高射特科へ
しかし…任地先は、北海道…
さらに言えば、僻地手当てが付くのでは?とまで怪情報が流れるほど良い話はなかった
が、それぞれが、藤田とじっくり話合い決めた道

それぞれの合い言葉は、【頑張ってこう!】
と、単純ではあるが、約3ヶ月を苦楽をともにした、同期に多くの言葉など必要ないのである
そんな中、新隊員前期、最後の訓練
総合野営を迎えるのである


今日も藤田3尉の声は響いていた
「食後、12:30より、天幕を構築する!質問」
負けじと、気合いの入る新体員
「無し!」と答え
別れて、初めての缶飯わ食べる
とり飯…
決して美味いとは言えないが、若い隊員達にはお構いなし
ましてや、ここは演習場
贅沢など言えない事は誰もが知っていた。
食事をしている、2班の面々に、山本3曹は、「天幕構築が終わったら、陣地を守る為、保哨を付ける。よく監視容量を思いだしとけよ」と告げる
すると班員の中には、教範と呼ばれるマニュアル本を読みながら飯を食べる者、ノホホンと飯を食い続ける者がいる
こーゆう所で将来、差が付くもんだなよなぁ
と山本は思いながら、鍛え上げた班員達を見ていた


「杭持ってこいよ〜!」
こんな声や、打ち込みのカーンと言う音が響く
天幕とはようはテント
明日、朝から25キロ行軍であるから、ここで眠る時間も少ないだろうが
行軍終了後、もう一泊するので、基本にのっとり構築していた
天幕が1張り構築されると三島と仲間の二人は、班付きの佐藤に引きつられ、監視の為の穴を掘っていた。
「……」文句も言わず、ただエンピを扱う二人
太陽は容赦なく、二人を襲う
すると佐藤が
「おし!ちょっと休憩だ」
と言い、ぬるかったが…缶コーラを二人に渡した
「これは、他の奴らには内緒だぞ」と今まで厳しさばかり目立った、佐藤の優しさ一面を二人は確認した事、さらに、ぬるいが、演習場でのコーラの美味しいを味わい…感動していた


夜21時
一時状況は中止され、明日の行軍に向け、早めの睡眠を取る
2時頃…
森は、用便を足しに外に出ると…
小ぶりではあるが、雨が降っていた
「雨だ…」
雨衣を着ての訓練は幾度となく経験はしたが…
辛いと言う思いしか、森には無い
嫌、森に 、と言うより、陸自の隊員に取って雨は、大敵と言えるだろう
「朝から雨なら…もう逃げたいなぁ」
無意識に口に出す森。
一時期、自分の弱さから、班員達を怒らせた
さらには、10キロ行軍の最後のハイポートでは遅れてそうになり、佐々木などの体力自慢から背中を押してもらった記憶が蘇る
駐屯地では無い
演習場にいる今なら…
そう一瞬、頭をよぎるが…
【頑張ってこ】
こう言い合い励ましあった同期を裏切るわけにはいかず
「ここまで来たら逃げるなんて変だな…よし!気合い気合い!」
と自分に言い聞かせ、天幕へ戻ったのだった


朝…
「うわっ!雨だ!」起床時間は05:00
誰もがこの雨にショックを隠せない
しかし、行軍は始まるのである。
雨に濡れた演習場の道は、砂場をあるいているように沈む
雨衣は、濡れ、中まで浸透してくる…
1工程では、元気があった者も2・3工程ともなると静かに
ひたすらゴール目指して、歩く
「キツイなぁ」ボソッと三島が呟く
無言で彼らは行軍を続ける
ひたすら ひたすら
ゴールの大松の台を目指して…


大松の台までの道のり

演習場のメイン道路中央道より新山中橋を通りぬけ、小坂道へ抜ける
この小坂道が、名前とは逆になかなか傾斜の厳しさ道路なのである
朝から降る雨は強さを増し、道路両脇の側溝は、流れ早く泥水が流れている
小坂道の終わり小坂ロータリーに入ると、隣には、第2戦車道がある
新隊員達がそこに近付くと、何やら、聞き慣れない爆音が響く
「戦車だ!」
先を歩く一班の方から声が響く
新隊員にとって産まれて初めての動く戦車
駐屯地に展示されてる戦車とは違い、荒々しく泥を巻き上げ、爆音を響かせ
一台…二台…と通りすぎて言った


生戦車と言う思いがけないプレゼントでにわか活気ついた一区隊の面々
ではあったが、やはり朝早くからの行軍と、初めての野営が疲れを助長させていた
しかも雨
当然のごとく送れそうになる隊員も出てくる
三島がふと森を見ると
雨なのか…
汗なのか…
涙なのか…
わからないが、顔をぐちゃぐちゃにしながら、さらに真っ赤にさせながら奮闘中であった
三島「森… お前の顔、汚いぞ。お前彼女出来たとか言ったよな。その彼女俺にくれ。今のお前の顔じゃ彼女可哀想だぞ(笑」
と三島が言うと
森「うるせー、三島の顔だってひでーよ、お前の今の顔なら一生彼女できねーよ(笑」
と、冗談を言い合っていた
この時、二人とそのバカバカしい会話を聞いていた班員達は、今回は辛いけど…
余裕だな
と安心していたとゆう


12:00
昼になると、雨もやんできた
腹も減ってくるが…
朝06:30より始めた行軍も残す所あと一キロとなっていた

ここからは、班行動だった
一班が大松の台に向け前進すると
パンパン
と空砲音が響く
「やっぱりホフクはするんだな」
と佐々木、高橋が話ていると
班長山本は、2班を前進させ、号令をかける
「第二はーん!」
新隊員最後の戦闘訓練だろう
誰もが厳しさを感じながらそれぞれのホフクをし大松の台に突入!
空砲をならしていたであろう、区隊付きの宮川一曹は早々に退避し大松の台を奪取成功!
と思いきや…
先に突入した一班の姿が無い…
「ん!?」三島、仲間がその異様さに気付いた時
パンパンと空砲音が響き、一班員が、大松の台よりさらに、先、500メートルはあるだろう丘に向かい奇声を出しながらダッシュしていた。
山本は
「第二はーん、前方クジラ山まで、突撃に〜」
と声を出すと
次の行動を理解した佐々木は
「二はーん いくぞ!」と毎日終礼後に円陣を組んでかける掛け声をかけり
山本の「進め!」
で全員、言葉にならない奇声でクジラ山まで走る
とにかく走る…

「13:00状況終了〜!」
藤田3尉の声が響く
待ちに待った言葉
その場に倒れるように座る者もいれば、すでに大の字で寝ている者もいる
藤田が
「各班事集まれ」と声をだすと
こんな疲れた表情の新隊員達でも、声に反応し隊列を組む


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